【MLB】6連続QS中の菊池雄星 フィールドに転がる情報を集める鋭い“観察眼”

マリナーズ・菊池雄星【写真:Getty Images】

レンジャーズ戦でのストレート35球のうち16球がロウに投じたもの

マリナーズの菊池雄星投手が3勝目を挙げた5月30日(日本時間31日)のレンジャーズ戦は、目を見張る剛球が注目を集めた。直球の最速が99マイル(約159キロ)を計測。スコット・サービス監督は翌31日(同6月1日)の会見で「力の入れどころ(リリースポイント)に気持ちがピタリと一致した結果」と、その要因を分析。今季節目の10登板目を7回途中3安打2失点の力投で締めたが、印象的な直球を違う視点で見ると、成長を遂げる菊池の一面が浮かんでくる。

104球を投げたレンジャーズ戦は、今季軸にするカットボールとストレートをほぼ均等に配した。前回24日の敵地・アスレチックス戦では、88球中ストレートが44%(39球)、カットボールが34%(30球)だったが、この日は、ストレートが34%(35球)、カットボールが35%(36球)だった。スライダーとチェンジアップも効果的に織り込んでいたが、実は2回、5回、7回はストレートを一気に増やした。

その理由は6番に入ったネイト・ロウである。

5回表、2死で迎えた7番のカルバーソンにはチェンジアップを見せ、外角への159キロストレートで内野フライに打ち取り、その回を終えるが、直前のロウに対しては4球全てストレートで挑み、見逃し三振に仕留めた。この日、ロウとは3打席で対峙。2回の1打席目は10球の勝負となったが、そのうち7球がストレート。四球を与えた7回の第3打席では7球中5球がストレートだった。計16球。この日投じたストレートの約46%をロウ1人に費やした。

2019年にレイズでメジャーデビューを果たし、今季からレンジャーズのユニホームを着る25歳のロウは、その後の試合で3番を任されている。同地区の有望格と捉え、力勝負を挑んでいたのだろうか……。菊池は、淡々とした口調で答えた。

「真っすぐを弾き返せていないなと、3日間見て思ってました」

「自分のベストを毎試合出すだけですから。あまり将来(今後)のことというよりも、今日のベストを出したという感じですかね」

深読みはあっさりと斥けられた。しかし、多投した根拠は明確にした。

「真っすぐを弾き返せていないなと、3日間見て思ってました。実際、前にも飛んでなかったですしね。変に中間球というか、カットを投げるよりも、押していった方がいいんだろうなっていうのはありました」

同一カード4戦目を任された菊池は、本拠地T-モバイル・パークの一塁側ダグアウトからフィールドに転がる情報を集めていた。この日の20アウトの2つは、用意されたスカウティングレポートからではなく、観察眼で得た相手の弱点を徹底して突いたこととつながっていた。

バランスのいいフォームが生む力を指先の一点に集中させ、リリースポイントで理想的な爆発力を起こすコツをつかんだ菊池。次回登板は6月5日(同6日)の敵地・エンゼルス戦に決まった。豪快な打撃でリーグの本塁打王争いを演じている花巻東高の後輩、大谷との2年ぶりの対決が実現する可能性がある。

球速も球威も増したストレート。菊池雄星は大谷翔平にどう使うか。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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