夫は年収約2800万円でも激務。転職してほしいが収入減にどこまで耐えられる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、39歳、専業主婦の女性。3人の子どもがおり、夫の平均月収は140万程度と高収入。ところが、働き方がハードで健康面も心配だそう。もっとゆとりある働き方にしてほしいといいますが、どれくらいまでなら収入が減ってもやりくりできるでしょうか? FPの秋山芳生氏がお答えします。

39歳専業主婦です。夫の働き方がこのままでいいのか悩んでいます。

夫も39歳、歩合の割合が高い営業職で、手取り収入は現在月140万円くらいです(毎月変動するので年間平均です)。去年も同じくらいでしたが、一昨年は月100万円くらいでした。来年はどうなるのと夫に聞きますが、成績次第だからはっきりしないそうです。

収入が高いのはありがたいのですが、かなりハードに働いており健康面などが心配です。家族の時間もあまり取れていないので、収入は下がってもいいから、もう少しゆとりがあって、固定給の安定した仕事に転職をしてもいいのではないかと考えています。

ただ、子どもが3人おり将来の教育費のことや、現在住宅ローンもまだあること、収入上昇とともに生活水準も上がっていることなどから、収入が下がっても大丈夫なのか心配です。逆にどれくらいの収入があればこの先安心できるのか、などを相談に乗って頂きたいです。

子どもは大学まで通わせたいと考えています。地方なので、仕送りが必要なことも考えておきたいです。現在保険などで積み立てていて、子どもが18才の時にそれぞれ600万円ずつの準備になるようにしてもらっています。

住宅ローンはあと2,000万円くらい残りがあります。繰上げ返済をした方がいいのかも悩んでいます。残り期間は25年で、金利は0.825%で、夫がガンになった時にローンがなくなる保険も付いています。

保険の支払いが月17万円と高いですが、そのうち13万円くらいが貯蓄型で、ほとんどが教育用として貯めています。掛け捨ての部分4万円くらいで少し高いのかなと思っていますがどうでしょうか。4万円のうち、1万5,000円くらいは父母の分を支払っています。

貯蓄は、銀行でする分と、つみたてNISAでする分をなんとなくで分けています。投資信託などは、収入が下がった時には積立額を下げるつもりです。

生活費は、食費と夫の交際費などは、もし転職となれば下げられると思います。一般的な生活費がどれくらいか分からないのですが、なんとなく使いすぎているという実感は持っています。

車は2台持ちで、夫は5年ごと、私は7年ごとくらいに買い替える予定です。それぞれ300万円くらいの予算を考えています。

将来に向けてどれくらいの貯蓄があればいいのか、そのためには今どれくらいの収入があればいいのか、などの目安が分かると嬉しいです。

(私自身は、事情があり仕事に就くのが難しい状況です。それもあり夫が頑張ってくれているのですが、あまり無理もさせたくないと思っています。今後は在宅でできる仕事も考えていきたいです)

長文になってしまいすいません。よろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・女性、39歳、専業主婦、既婚

・同居家族について:

夫(39歳)、営業職、手取り月収140万円(平均、ボーナスはなし)

子ども3人(13歳中2、11歳小6、6歳年長)

・住居の形態:持ち家(戸建て/福岡県)

・毎月の世帯の手取り金額:140万円(変動があるため平均)

・ボーナスの有無:なし

・毎月の世帯の支出の目安:70万円

【支出の内訳】

・住居費:7万8,000円

・食費:15万円(夫の仕事での会食など含む)

・水道光熱費:2万5,000円

・教育費:9万円

・保険料:17万円(内13万円が学資などの積立)

・通信費:3万円

・車両費:4万円

・お小遣い:3万円

・その他:8万.7,000円ペットの病院、趣味や娯楽、雑費、夫の交際費

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円(預金)、5万円(持株会)、5,000円(夫iDeCo)、6万3,000円(夫婦つみたてNISA)、40万円投資信託など

・現在の貯金総額:620万円

・現在の投資総額:1,100万円(つみたてNISA含む)、100万円(持株会)、24万円(iDeCo)

・現在の負債総額:2,000万円(残り25年、金利0.825%、ボーナス払いなし)

・老後資金:夫・厚生年金、妻・国民年金


秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。ご相談者様は専業主婦で、ご主人が140万円の手取りがあり、お子さんが3人。ただし、ハードワークなため、転職も視野に入っているが、収入ダウンをどこまで許容できるかということですね。

高収入は「いつまで今の働き方ができるか?」が課題

月収が手取りで140万円ということは、年収でいうと2,800万円を超えており、非常に高所得です。月収が100〜140万円のレンジがあるとしても、年収1,800万円が下限ということになりますね。高額所得の方の場合、その働き方が継続出来るかという問題がついてまわります。

労働に比例しないで収入が上がっていく仕組みが作れていれば、さらに高い収入を得ることもできますが、「営業」などの成果に連動する職種や、「コンサルタント」などの能力と時間を提供し対価を得る場合、どうしても稼働時間の制限を受けてしまいます。その中で、収入を最大化しようとすると、「単価」を上げるか、「労働時間」を延ばすことになりますが、どちらにも限界がありますね。現在、ご主人は、非常にハードワークされているとのこと。40代を目前にしているので、20代・30代のような無理がききづらくなってくる年齢です。

仮に、しばらくは働き方を継続できたとして、
・体調を崩してしまった
・無理が利かなくなった
などの理由で、働き方を変えなければならないかもしれません。

今は黒字でも収入減に備えておくとよい

家計の状態をみると、黒字家計ですし収支としては大きな問題はありません。ただし、収入が減った場合に備えて無駄な支出は控えておくほうが、今後の生活にゆとりが生まれ、ご主人のプレッシャーやストレスも減ると思います。費目ごとに改善可能なポイントを、一つ一つ見ていきたいと思います。

【住宅費】7万8,000円 →見直しの余地あり
住宅ローンの返済が残債2,000万円、毎月の返済が7万8,000円とありますが、こちらは金利が0.825%とのことなので、多少ですが見直しによって下げられる可能性があります。0.4%前後の金利もありますので、見直しにより、支払い総額が数十万円改善する可能性があります。

【食費】15万円 →内訳を明確化
5人家族で15万は多いほうですが、ここに会食費が混ざっているので分けて考えたほうが良いでしょう。同じ「飲食」ということで、食費に混ぜてしまう人が多いですが、会食は、交際費になりますので、分けて管理することで、何に使いすぎているかが明確になると思います。

【教育費】9万円 →改善の余地あり
3人のお子さんの教育費ですね。ご収入から考えると高すぎることはありませんが、かなりかかっている家計だとは思います。教育費は聖域化して手を加えづらいことが多いですが、本当に子どもの成長につながっているか、楽しんでいるかなど見直してみるとよいかもしれません。

【通信費】3万円 →改善の余地あり
通信費に3万円はかなり高いと思います。仮に3万円の内訳を、8,000円の携帯3台(高校生のお子さん分)とすると、2万4,000円になり、6,000円を家のインターネット回線にしていた場合は、携帯代をまず変えていくと良いと思います。スマートフォンなども3,000円を切る金額で通信品質の良いものも出てきました。1台あたり月々8,000円から3,000円に支出を抑えられれば、長期に渡って考えると数百万円の支出改善につながる可能性があります。

大幅に改善の余地があるのは保険料

【保険料】17万円 →大幅な改善の余地あり
保険については、かけ過ぎだと思います。本来保険は、「万が一のことが起こった場合に、周りの人への責任が果たせなくなってしまったり、人生が詰んでしまうような事態を避ける」ために入るものです。目的が貯蓄なら、他の金融商品で代替可能です。

13万を学資保険として貯めているとのことでしたが、中2、小6のお子さんの分は解約すると返戻金が下がってしまってもったいない上に、投資などでリカバリーをするには時間が短いので継続したほうが良いでしょう。年長のお子さんの分は解約し、ジュニアNISAと貯蓄を組み合わせていくことで、流動性の高い状態をつくることができます。固定費の支払いが減ることで、ご主人の「稼がなければいけない」というプレッシャーも下げられると思いますので、御一考ください。

掛け捨ての保険も2万5,000円入っていらっしゃいます。万が一の死亡に備えて、遺族年金では足りない分を、収入保障保険などで生活を守るのは良いと思いますが、医療保険は預貯金もあるので不要と思います。1万円以下にできると思います。

また、ご両親分を支払っている1万5,000円の保険については、内容がわからないのでなんとも言えませんが、医療保険であれば、医療費は1割〜3割負担であることや、「高額療養費」で支払いの上限があることからも、貯蓄でカバーできることがほとんどです。1万5,000円分を貯蓄に回すことで備える方法もあると思います。

【その他】の費目は内訳を把握して

【その他】
内訳がわからなかったのでなんとも言えませんが、衣服・美容、健康・医療、趣味・娯楽、手数料、日用品やペット代が【その他】に含まれているのであれば、高すぎるとういことはないと思います。ただし、内訳をしっかり管理することで、「使いすぎポイント」が見えてきますので、家計簿アプリなどを活用して内訳を把握し、支出をコントロールすると良いと思います。家計簿アプリを利用する場合、購入履歴に「使途不明金」がでてくることがありますので、放置しないで何に使ったかを仕分するとより家計が明確化していくと思います。

資産形成方針は改善の余地あり

資産形成については、かなり、ちぐはぐな印象を受けます。「とにかく運用しよう」ということで場当たり的に投資をはじめていないでしょうか? どのような資産をいくら持っているのかのポートフォリオがわからないのでアセット・アロケーション(資産配分)についてはわかりませんが、アセット・ロケーション(資産の置き場所)は改善のアドバイスができます。

まず、非課税枠を使い切らないで、投資信託を40万円買っていることです。つみたてNISAは1人月に3万3,333円の拠出枠があるので、6万6,666円までは投資可能なので使い切りましょう。老後資金を貯めるという意味ではiDeCoは「所得控除」が受けられるのでかなり有利な制度です。特にご主人は収入が高い分、所得税率も高いため、所得控除によって戻ってくる金額が大きくなりますので使い切った方が良いでしょう。

また、自社株を5万円とのことですが、会社に自分という資産(時間・能力)を投資しているので、さらなる集中投資をしていることになります。ただし、インセンティブ(購入時に10%オフなど)があるならば、売却可能な単元まで保有し売却していけば、インセンティブ分儲かる可能性もあり、良いかと思います。

家計の正確な把握が鍵

ご質問にある、「いったいいくらの収入で、今後も生活できるのか」ということですが、まずはご自身の家計の支出を見直して、「この金額の支出で生活でき、貯蓄も貯まる」というラインをみつけることが重要と思います。

収入が多くても、体を壊してしまっては元も子もありません。また、収入を落とす場合も、支出のコントロールや資産形成をしっかりと考えられていないと、不安そのものが解決しないことが多いです。まずは支出を「見える化」し、払わなくて良い無駄な支出を改善されると「これくらいの収入まで落としても、貯蓄も運用も可能」というラインを見つけられると思います。どこか参考になれば幸いです。

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