天国と地獄を見た男の“逆襲劇” DeNA伊藤光、指揮官も信頼する「2番・捕手」の役割

DeNA・伊藤光【写真:荒川祐史】

絶賛止まらない三浦監督「ファウルで粘れ、進塁打を打てて、バントもできる」

■DeNA 11ー7 ロッテ(5日・横浜)

DeNAは5日、本拠地・横浜スタジアムで行われたロッテ戦に11-9で勝利。セ・リーグ最下位は変わらないが、交流戦では6勝3敗2分で、首位・中日に1ゲーム差の2位に付けている。「交流戦優勝」に向けたキーマンの1人は、「2番・捕手」として存在感を放つ伊藤光捕手である。

硬軟自在だ。初回、1番・桑原が左翼フェンス直撃二塁打で出塁すると、きっちり初球に送りバントを決め、続く佐野の先制適時二塁打につなげた。1-1の同点で迎えた3回には、やはり先頭・桑原の二塁打の後に打席に入り、今度は二塁ベース寄りの遊ゴロで、走者を三塁へ進めた。この進塁打も、5番・宮崎の勝ち越し適時打によって実を結んだ。

つなぎ役でなく走者を還す役割を担ったのは、1点リードで迎えた4回だ。2死二塁のチャンスに桑原が申告敬遠で歩かされ、勝負を挑まれた伊藤光は燃えた。「目の前で敬遠されたので、必ずランナーを還すんだと思い打席に向かいました」と明かす。カウント2-2からロッテ先発・美馬のフォークを捉え、レフトの頭上を越す2点二塁打。試合の流れを決定づけ、両手を挙げて喜んだ。

「打撃の状態が良く、ファウルで粘れるし、進塁打を打てるし、バントもできる」というのが三浦監督による伊藤光評。さらに「捕手としても投手を引っ張ってくれる、大きな存在です」と絶賛が止まらない。

昨季はラミレス前監督から「我々が練った戦力と違う」

伊藤光は2018年、シーズン途中のトレードでオリックスから移籍。翌19年に国内FA権を取得し、同年オフには4年の大型契約を結んで残留した。ところが、昨季の1軍出場はわずか30試合。ラミレス前監督から「われわれが練った戦略と違う方向へ向かっていた」とリードを批判されたこともあった。

今季もケガなどで出遅れ、1軍初昇格は5月18日にずれ込んだが、同25日の交流戦開幕を機に「2番・捕手」に定着すると、打線が効果的につながり始めた。6月3日のソフトバンク戦では、ファウルチップを左手首に受けて打撲し、翌4日のロッテ戦を欠場。それでも三浦監督は「2番・捕手」のスポットに控え捕手の嶺井を当てはめた以外、オーダーに手をつけなかった。「他のバッターの状態も良いので、動かしたくなかった」と明かし、一夜明けた6日には伊藤光が復帰した。

オリックス時代の2013年10月8日・楽天戦でも、1度だけ2番を務めたことがあるが、嶺井は全くの初体験だった。この点からも、伊藤光ありきの打順であることがうかがえる。一方、捕手はもともと負傷のリスクが高いポジションで、伊藤光自身も32歳のベテランだけに不安も付きまとう。

今季は配球面でも、三浦監督から「相手打者の反応を見ながら、うまくリードしてくれている」とお墨付きを得ている伊藤光。交流戦終了後もペナントレースは続くが、その存在がDeNAの生命線となりそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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