【柔道世界選手権】「金」も期待できる!“職人”アナリストの驚異的な仕事ぶり

アナリストは角田夏実の世界選手権Vにも貢献

縁の下の力持ちだ。日本の「お家芸」とも言われる柔道。6日に開幕した世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)では、多くの金メダル獲得が期待される。その強さを支える柔道日本代表のアナリストとして活躍する鈴木利一氏(33)を直撃した。

いまやどの競技もデータを活用する時代。鈴木氏によると、国際大会の出場選手発表後から大会終了までの間に主に3つの仕事があるという。

1つ目は基本情報の収集。「約4500人いるライバルの過去8年分のデータベースから、出場する選手一人ひとりのフォルダをつくる。中身は4つの条件を満たす試合映像や対戦相手の情報。エントリー数700人超えの大会もあり、事前の仕込みが重要」と根気のいる作業を行う。

2つ目は、試合撮影とタグ入力(情報入力)だ。約40キロの機材を背負い、1マットに対して2台のカメラをセット。「試合全体を撮るカメラと掲示板を撮るカメラを合成して1つの映像にする。掲示板を撮る理由は、分析のため。ライバルの技の傾向や得失点の時間帯、国際審判員が出す罰則判定のクセなど、分析には欠かせない情報を記録する。試合中は『ゴジラ』の愛称を持つ映像分析システムを使い、リアルタイムでタグ入力をする」。さらに「当日の試合映像を見返したい選手もいることから、これまで蓄積してきたデータと合わせてフィードバックをする」と早業で複数の仕事を同時にこなす。

3つ目は、振り返り作業。勝敗に関係なく「次に向けて何をするか、行動が最も大切。そのためには過去・現在・未来をみんなで整理する。試合後に選手とコーチ、スタッフでミーティングをして見通しを立てる。文字起こし、可視化してから関係者に共有される」と情報を最適な形に仕上げる。科学的な分析作業は、全日本柔道連盟科学研究部の分析班で実施。「蓄積されてきた数々のデータやノウハウは、先人や現メンバーが一つずつ築き上げてきたもの。長い歴史の積み重ねがあるからこそ、総合力で選手やチームを支えることができる。今の環境に感謝しかない」と述べた。トップ選手同様、裏方の姿勢もやはり超一流。ここに日本柔道界の真骨頂が隠されていた。

© 株式会社東京スポーツ新聞社