【大学野球】背景には元広島戦士の助言 “パンフ”に名前のない福井工大の伏兵が殊勲のアーチ

福井工大・木村哲汰【写真:中戸川知世】

広島で活躍した町田公二郎氏がコーチに就任、左キラー“襲名”

全日本大学野球選手権2日目が東京ドーム、神宮球場で行われベスト8が出揃った。福井工大は「2番・右翼」で先発出場した木村哲汰外野手(4年)が大会第10号ソロを含む3安打1打点の活躍を見せ、大商大に4-1で勝利。元々はメンバー外だったが、直前の登録変更でスタメンにまで抜擢された男が、チームを8強に導いた。

当落線上だった男が大仕事をやってのけた。2-1の僅差の6回先頭。木村は左翼席にアーチをかけた。「メンバーにはギリギリ入れないかもしれないと思っていましたけど、最後まで諦めず、粘って練習してきました」と、喜びを滲ませた。ベンチ入りどころかスタメンで猛打賞。最高の結果を残した。

大活躍でチームの勝利に貢献した木村だが、パンフレットにその名前はない。大会直前に選手変更で急遽登録されたが、当初の予定はベンチ外。福井工大・下野博樹監督は理由をこう明かした。

「ヘッドコーチ、打撃コーチから『よくバットが振れているから』と言われ、直前に登録しました。相手が左投手だったから、思い切って2番で起用しましたけど、本当によくやってくれた」と、期待に応えた木村をねぎらった。

6回に左翼席へソロを放った【写真:中戸川知世】

7年ぶりのベスト8進出、8強出揃い、準々決勝は名城大

3安打は全て大商大の先発左腕・伊原陵人投手(3年)から。役割を十分果たした。背景には、この春から福井工大のコーチに就任した元広島の町田公二郎氏の存在が大きい。町田氏は現役時代、広島、阪神で代打の切り札として活躍。左腕にめっぽう強いことから「左キラー」と呼ばれた。

町田コーチからは「全国では真っ直ぐが速いから、振り遅れないように始動を早くする」という指導を受けた。その言葉通り、本塁打を打ったのは内角の直球。押し負けずにスタンドまで運んだ。

7年ぶりのベスト8進出を決めた福井工大は、10日の準々決勝では、名城大との対戦が決まっている。

「全員で速球に対応する練習はしてきたので大丈夫です。新鮮な気持ちで総力戦で勝ちたい」

福井工大は勝てば1994年以来27年ぶりの4強。ベンチ外だった「左キラー」が、今大会初の神宮球場で、チームの勝利に貢献する。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

© 株式会社Creative2