高齢者ワクチン接種 移動負担の軽減へ 長崎県内市町、工夫凝らす 複数会場、タクシー券、巡回…

集団接種会場との往復運賃を無料にした予約制乗り合いタクシー「さいかいスマイルワゴン」=西海市大瀬戸町

 長崎県内は離島や半島が多く、公共交通機関が脆弱(ぜいじゃく)な地域も少なくない。それだけに、新型コロナウイルスワクチン接種に出向く高齢者の負担を軽減するため、各市町は医療体制や地理、人口分布などそれぞれの地域の条件に応じて、複数の接種会場を設けたり、交通手段を確保したりと工夫を凝らしている。
 長崎新聞社が県内21市町から、主な交通手段や交通弱者対策を聞き取った。
 新上五島町は集団接種を町北部の町石油備蓄記念会館だけで実施。個別接種はない。町内に診療所は複数あるが、効率性や安全性などを考慮し総合的に判断したという。ただ、会場まで30キロ以上離れている地区もあり、自家用車がない人はバスで片道1時間以上かかる。このため町は、会場からおおむね10キロ以上(公共交通空白地帯の場合おおむね7キロ以上)離れた高齢世帯には接種券を送る際、会場までの2往復分としてタクシー券4枚を同封。1回の乗車につき自己負担は500円で済む。
 タクシーを活用する自治体はほかにも。東彼東彼杵、川棚両町は福祉政策として配布している券の利用を呼び掛け、北松佐々町も既存の助成制度を使うよう促す。島原市や西海市、南島原市の乗り合いタクシーは接種時の送迎に利用できる。壱岐市も条件付きで助成を計画している。
 支援がきめ細やかなのは大村市だ。個別接種や集団接種に加え、出張所などに医師らが赴く巡回接種を6会場設置。要介護度の高い人には専用タクシーを無料で使えるようにしており、一部の地域には無料の専用バスも運行している。巡回接種は五島市も玉之浦など一部の地区で予定する。
 バスで大人数を輸送する例も多い。自治会単位で集団接種を実施している東彼波佐見町は貸し切りバスが随時、各地区と会場を往復。市内2カ所で集団接種をしている雲仙市は1日2往復の無料送迎バスがある。対馬市は一部地域で送迎バスを運行予定。平戸市は二次離島の高島の住民に対し、平戸島に渡る費用を補助。北松小値賀町は75歳以上を対象に町社会福祉協議会の移送サービス料金を負担した。
 県が12日から長崎、佐世保両市で始める大規模接種では、最寄り駅などと会場を結ぶ巡回バスを運行。佐世保市は一部の集団接種会場に無料シャトルバスを出している。諫早市も集団接種会場の市健康福祉センターと近隣の駐車場や市役所を結ぶジャンボタクシーやマイクロバスがある。
 一方、長崎、松浦、西彼長与、時津の4市町は「支援はない」などと回答。いずれも個別接種に対応し、松浦市以外は集団接種も複数カ所で実施している。長崎市担当者は「病気やけがで自ら動けない人については巡回往診で対応するという話も出ている。往診を受けていない場合は今後検討が必要」としている。

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