【東京五輪】某競技団体幹部は〝ワクチン辞退5%〟に強い危機感「厳しい〝バブル〟も全員が打ってこそ」

大会組織委・橋本会長(下)とJOC・山下会長はワクチン接種を奨励するが…

東京五輪選手団の一部が新型コロナウイルスのワクチン接種を拒否し、波紋が広がっている。選手団への接種は今月1日に始まり、対象者は選手約600人と監督、コーチら関係者を加えた計約1600人。原則は「個人の判断」とされ、すでに95%が接種を受け入れているが、残りの5%は辞退している。この状況に強い危機感を募らせる某競技団体幹部は本紙に問題点を訴えた。

国際オリンピック委員会(IOC)を通じて米薬品大手ファイザー社からワクチンが無償提供されることが発表されたのは先月上旬。当初から日本オリンピック委員会(JOC)の籾井圭子常務理事は「最終的に接種するかしないかは本人の判断」と強調したが、公表直後から一部の該当者は拒否の姿勢を表明していた。その後、JOCの山下泰裕会長(64)は「後ろめたく思う必要はない」と呼びかけ、全体の95%が接種を受諾したことを発表。しかし、依然として5%は「打たないつもり」と回答している。

拒否を決めた人の主張は「打った後にどんな症状が出るか分からないので怖い」というもの。最近ではワクチン接種後の死亡例なども報道され、不安を募らせる参加者も存在する。この状況に強い危機感を募らせているのが五輪競技団体幹部A氏だ。本紙が直撃すると――。

「そもそもワクチンは全ての人が接種しないと意味がない。それにワクチンを怖がっている理由が釈然としませんよ。医科学的なデータに基づいているならいいけど、ちゃんと調べずに危険だと言って敬遠するのはナンセンス。(重い副反応は)10万人に1人の確率なのに過度に怖がる人もいる。結局、自分が感染するだけではなく、他の人にうつしたらどうするつもりなんでしょうか」

拒否している人はアスリートだけでなく、指導者も含まれている。大会中はGPS機能によって海外選手の行動が管理され、選手村と宿泊先、競技会場の動線以外は外部と接触できないが、A氏は「こういう厳しい〝バブル〟も全員がワクチンを打ってこそ」と主張。また、接種を推奨する別のJOC関係者は「今の状況で五輪をやらせてくれるのだから、せめてワクチン接種は義務にした方がいい」と話す。

もう一つ頭を悩ませているのは、接種を義務化できない点だという。世間では「ワクチンハラスメント」なる新語も生まれており、接種を強制された相談の例もある。「個人の自由とはいえ、できれば冷静に説得して接種を勧めたい。でも、受け取り方によっては強制になってしまう。センシティブな問題ですから…」(A氏)。結局、同じ団体内でも拒否の理由が聞けない状態だという。

現在、日本選手団は東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで続々と接種。さらに今後は約7万人のボランティアやメディア関係者に対してもワクチン接種が実施される方針で、大会組織委員会の橋本聖子会長(56)は「日本国民の皆さんの安心のために接種の比率を上げる努力をしている。関係者がワクチンを打って準備に取り組むことが日本の〝おもてなし〟だと考えている」と訴えている。とはいえ、義務化しない限りは接種率100%になることはない。ワクチン接種を巡り、日本選手団内に新たな〝溝〟が生まれてしまうのか。

© 株式会社東京スポーツ新聞社