「セ復帰」目指す鷹・バレンティン 交流戦で “底力” アピール…動く球団はあるのか

復調ムードで笑顔を見せるソフトバンク・バレンティン

【赤坂英一 赤ペン!!】ソフトバンクのウラディミール・バレンティン外野手(36)が13日、ヤクルトとの交流戦最終戦(ペイペイ)で通算300本塁打と1000安打を達成した。その勢いを駆って301号も放ち、まだ衰えていない長打力を見せつけた。

そんなバレンティンの打棒について、ある球団関係者はこう指摘する。「来季のセ・リーグ復帰に向けて格好のアピールになったでしょう。バレンティンは今季限りで、年俸5億円の2年契約が切れる。移籍してからは二軍暮らしが長く、打率も昨季が1割6分8厘、今季2割8厘。このままではとても来季の契約は結べない。それでバレンティン自身、来年からセ球団へ移籍することを望んでいるそうです」

バレンティンの不振の原因が、パ投手陣の内角攻めにあることは衆目の一致するところだ。150キロクラスの速球で胸元やヒザ元を攻められ、無理に打ちにいって体が前に突っ込んだり、逆にしっかり見極めようとしたら差し込まれたり。おかげで、すっかり自分の打撃を狂わせてしまった。

バレンティンのセ復帰願望は、すでにセ6球団に知れ渡っている。このうち、DeNA関係者は「興味ない」そうだ。

「バレンティンと同じ右の大砲ならオースティンとソトがいる。もし彼らが故障しても宮崎がいるし、5年目で(今年)23歳の細川もこれから伸びるはず。だいたい外野は佐野、オースティン、桑原、神里らでいっぱい。守らせるポジションがないよ」

首位独走態勢に入った阪神も長距離砲なら間に合っている。古巣のヤクルトも最近はAクラスを維持しており、一部首脳陣と折り合いの悪かったバレンティンを戻すメリットはほとんどない。

獲得の可能性があるとすれば、そのヤクルトと3位を争っている中日だろう。チーム本塁打数が巨人の半分にも満たないセ最低の33本で、大砲の補強が急務だからだ。が、中日関係者によると、障害もあるという。

「一番の問題は、年俸でバレンティン側と折り合えるかどうか。コロナ禍の影響もあって、ウチの予算も余裕があるとは言えません。今季の5億円なんてとても出せないし、その半分でも厳しい」

中日は今年、主砲ビシエドと結んだ3年契約が切れる。今季は首位打者の可能性も高く、地元の人気も絶大。引き留めるには年俸3億円から大幅アップが必要で、補強に回せる資金に限りがあるのだ。もちろん、今後のバレンティンの成績次第では、そうした話も雲散霧消してしまうだろう。=金額は推定=

☆あかさか・えいいち=1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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