政治にちょっと関心があるけど、ちゃんと調べるほどには興味ない!
そんなあなたに選挙ドットコム素人代表ひがし(@misuzu_higashi)が政治や選挙にまつわる専門用語を簡単解説するコーナー、第4回は「内閣不信任案」です。
いま話題の「内閣不信任案」について、わかりやすく説明します。
ずばり、内閣不信任案とはなんだろう?
まず、「内閣不信任案」とは、日本国憲法第69条で定められている「内閣不信任決議案」のことを指します。日本では衆議院にのみ存在する権限で、「議会は内閣を信任しません」「退陣してください」という意思表示をし、それが可決されれば実際に内閣を総辞職させることができます。
議院内閣制をとっている日本にとって、非常に大切な権限です。
内閣不信任案は誰が出すもの?
内閣不信任案を出す(発議する)ことができるのは衆議院議員です。
内閣を信じられない人のための権限ですから、基本的には野党にいる人が内閣不信任案を出します。
ただ、1人では内閣不信任案を出すことができません。自分の他にも賛成者を50人以上集める必要があります。
ちなみに、衆議院の定数は465人なので、衆議院議員のうち約11%の賛成を集めれば内閣不信任案を出すことができる計算になります。
内閣不信任案を出すと衆議院はどうなる?
内閣不信任案が出されると、それを可決するのか否決するのかを投票で決めることになります。
投票の結果、現在の内閣が衆議院において過半数からの信任を失っていることが分かった場合、内閣不信任案は可決されます。
A:内閣不信任案が否決された場合
内閣不信任案が否決された場合は、現在の内閣がそのまま行政を行います。
B:内閣不信任案が可決された場合
内閣不信任案が可決された場合、現在の内閣は総辞職することになります。
総辞職までには2つのプロセスがあります。
メジャーなプロセスは、衆議院を解散し、総選挙を行い、特別会(特別国会とも呼ばれます)にて内閣総辞職を行うというものです。
このプロセスにはそれぞれタイムリミットがあります。
・内閣不信任案が可決されてから衆議院の解散を行うまで→ 10日
・解散から衆議院議員総選挙を行うまで→ 40日
・選挙の日から特別会(特別国会)を招集するまで→ 30日
レアなプロセスは、衆議院を解散せずにすぐに内閣総辞職を行うものです。
衆議院を解散させるまでのタイムリミット(10日)を過ぎても衆議院の解散を行わない場合も、そのまま内閣は総辞職することになります。
どちらのプロセスでも、内閣が総辞職を行ったあとは、新内閣の内閣総理大臣が指名されます。そして新しい内閣が発足するのです。
「内閣不信任案→解散総選挙」ではないの?
内閣不信任案=解散総選挙のイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、内閣不信任案を受けて衆議院が解散、総選挙を行って新しい内閣が発足するというのは、内閣不信任案が出されたあとのプロセスの1つです。
内閣不信任案が出されても否決されて何も起こらないこともありますし、レアケースでこそありますが、可決されたあと衆議院の解散を行わずに内閣総辞職を行うこともできます。
ちなみに、内閣不信任案が否決されることは多々あります。
実は2015年から2019年にかけて、第2次~第4次安倍内閣は毎年内閣不信任案を出されていました。2016年にいたっては、1年に2回出されています。
しかし、そのすべてが投票を経て否決されてきました。
また、内閣不信任案が提出されたため、投票が行われる前に当時の内閣総理大臣が自ら「解散」を言い出すケースもあります。
2005年、第2次小泉内閣の「郵政解散」が有名です。
最後に内閣不信任案が可決されたのは1993年6月18日。かなり昔ですね。
まとめ:否決されたらそのまま。可決されたら内閣は総辞職
内閣不信任案は、正式名称を「内閣不信任決議案」といいます。
現在の内閣を信任できないという意思表示をするもので、衆議院でのみ出すことができます。
衆議院議員であり、自分を含め51人以上の仲間がいれば内閣不信任案を出せますが、与党の人は出す必要が基本的にありませんので、「野党の人が出すもの」ととらえてよいでしょう。
内閣不信任案が出されると、衆議院で投票が行われます。
投票の結果、内閣不信任案に反対する衆議院議員が過半数であれば、内閣不信任案は否決されます。現在の内閣がそのまま行政を行います。
内閣不信任案に賛同する衆議院議員が過半数であれば、内閣不信任案は可決されます。内閣は10日以内に衆議院の解散総選挙か内閣総辞職をしなければなりません。
ちなみに、6月15日にも内閣不信任案が出されました。
立憲民主党・共産党・国民民主党・社民党の野党4党が、共同で菅内閣に対する内閣不信任案を6月15日午前9時に出したと報道されています。
もともと6月16日に国会が閉会予定なのですが、野党4党は「延長してほしい」という主張です。これに対し内閣を組織している与党は「延長はしない」という方針だったため、野党4党は協議の上で内閣不信任案を出しました。
午前9時に出された内閣不信任案は、午後の衆議院本会議で否決されました。
そのため国会は予定どおり6月16日に閉会される予定です。