8回の好機逃して痛恨引き分け 鷹・工藤監督が語った「代打・明石」の意図

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

4点を奪ったものの3点は押し出しによるものと投打の歯車は噛み合わず

■ソフトバンク 5ー5 日本ハム(19日・PayPayドーム)

ソフトバンクは19日、本拠地PayPayドームで行われた日本ハム戦を5-5で引き分けた。1点ビハインドの9回に栗原が起死回生の同点弾。5連敗こそ免れたものの、一時は4点をリードしていただけに痛い引き分けとなった。

先発のマルティネスが力投。両チーム無得点で迎えた5回には、この日プロ初出場初先発となった谷川原がプロ初安打初本塁打となるソロ本塁打を放って先制に成功した。さらに、2死二塁から中村晃、栗原、柳田、長谷川、真砂と5者連続四球。3つの押し出しでリードを4点に広げた。

誤算だったのは7回だ。逃げ切りを図って投入した嘉弥真が1死一、二塁のピンチを招き、高濱に3ランを被弾。さらに1死一、三塁で津森が渡邉に犠飛を許して追いつかれた。8回には板東が浅間に2戦連発となる勝ち越し弾を許して、一転、ビハインドを背負う展開となっていた。

8回には2死から甲斐が左中間への二塁打を放って出塁。得点圏に走者を置き、一打出れば、同点というチャンスを作った。ここで9番の川瀬に打順が回ると、ソフトバンクベンチは代打・明石を起用。だが、明石は空振り三振に倒れ、好機を逸した。

この場面、ベンチには川島やバレンティン、松田、今宮と実績ある選手が控えていた。その中で、工藤公康監督と小久保裕紀ヘッドコーチが導き出した選択は明石。工藤監督は試合後に「(相手投手の)ロドリゲスと考えたときに、バレンティンよりも左の明石のほうがいいという選択だった。9回先頭で、一発で同点となるところはバレンティンで行きたいということだったので、それもあって明石くんでした」と「代打・明石」の意図を明かした。

「みんなが帰ってくる時まで辛抱するところは辛抱しないといけない」

右投手のロドリゲスに対しての左打者ということ。仮にこの回のチャンスを逃したとしても、一発で同点にできるバレンティンを9回の先頭として残しておきたい。そんな思惑がソフトバンクベンチにあった。

ただ、明石はスタメンで起用された5月16日の日本ハム戦で2安打を放って以降、1か月以上、快音が響いていない。勝負所での代打として起用されているが、13打席連続安打なしと、状態は下降線。また、相手のロドリゲスも今季は対左打者の被打率.219に対し、右打者は.286。ただでさえ代打で結果を残すのは難しく、この策は当たらなかった。

この日は松田、今宮をスタメンから外し、若い谷川原を起用するなど、テコ入れに動いたソフトバンク。だが、7回無死一塁で栗原に命じた送りバントは失敗。一発を放った谷川原らを下げて守りに入った7回に追いつかれた。4点を奪ったものの、そのうちの3点は押し出しによるものと、投打の歯車は噛み合わなかった。

工藤監督はこの日の試合前にこうも語っていた。「ヘッドも色々考えて、打線がうまく回るか考えながらやってくれている。基本的にはヘッドにお任せしていますが、全く僕が何も言わないで『はい分かりました』というのはせずに『ここはこうして』と言うようにしている。怪我人がいると探り探りやらざるを得ないところがあると思っている。チームが落ち着いて、まずみんなが帰ってくる時まで辛抱するところは辛抱しないといけないかなと思います」。いまは我慢の時だ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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