【東京五輪】約40分間の5者協議は “茶番” 「無観客」を拒否し続けたのはIOCでなく日本側だった

5者協議は丸川五輪相(右)、バッハ会長らの思惑通りに進んだ(ロイター)

〝出来レース〟だったということか。東京五輪・パラリンピック組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、日本政府、東京都、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表らによる5者協議(21日)で、観客の上限数を会場定員の50%以内、最大1万人とすることを正式決定したが、「無観客」を拒否し続けたのは〝五輪貴族〟のIOCではなく日本側だったことが判明。水面下で綿密に練られた「筋書き」を追跡した。

五輪本番前で最後となった5者協議の冒頭あいさつで、IOCのトーマス・バッハ会長(67)は「観客上限の決定を聞くのを楽しみにしています。聞く前から言えますが、IOCは日本の皆さんの決定をサポートします」と話した。だが、この時点で「有観客開催」はとっくに日本側からIOC上層部へ伝えられていた。

5者協議は観客上限を話し合う体裁ではあったものの、冒頭あいさつを除くと約40分で協議は終了。その直後、丸川珠代五輪相(50)、組織委・橋本聖子会長(56)からは事前に報じられていた通り、観客数が「50%以内で最大1万人」と発表された。

記者団から「感染リスクを考えると無観客だが、なぜ観客を入れるのか?」と問われた丸川五輪相は、側近が準備していた書面を受け取ると「観客を入れる時はこのように条件を整えてほしいという提言があり…」と政府のコロナ対策分科会・尾身茂会長(72)の提言を引用し、紋切り型のコメントに終始した。

一方、IOCや国際競技連盟(IF)の関係者、国内外のスポンサーなどは観客と「別枠」扱いとなることも公表。武藤敏郎事務総長(77)は「大会運営に関係する人たちは主催者であり、観客でない」と言い張ったが、この〝五輪貴族優遇〟の決定も筋書き通りだった。

複数の関係者の証言によると、今回発表された「有観客」に最後までこだわったのは、日本側だったという。ある組織委関係者は「IOCはテレビ放映権料さえ手に入ればいい。むしろさっさと無観客を発表し、日本の世論を納得させてほしいという声もあった」と明かす。

バッハ会長、ジョン・コーツ副会長(71)ら〝五輪貴族〟による日本国民を軽視する発言が飛び出した先月には、国内で中止論が噴出した。その時点で強行開催するための最終手段として「無観客」のカードを切る手もあったが、政府と組織委はあくまで有観客にこだわった。その理由について前出関係者は「チケット収入もあるが、やはり少しでも祝祭ムードの中で五輪を成功させたという事実が欲しかった」と打ち明けた。やはり、各方面で指摘されてきたように、秋の衆議院選挙を見据えたものだったのか…。

今でも世間では「中止」や「無観客」を求める声が根強いが、フタを開ければ有観客での開催。かくして政府や組織委が思い描いた通りの展開となった。緊急事態宣言の延長、解除などの決定時期なども、全ては有観客開催へ向けた〝逆算〟だったようだ。この決定を最も望んでいたのは菅義偉首相(72)かもしれない。

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