仕事3つを掛け持ちする44歳。厳しい状態を抜け出し老後資金を貯める3ステップ

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回は、老後資金を貯めたいのに貯まらないという44歳、独身の方からのご相談です。現在、3つの仕事を掛け持ちしており、精神的・肉体的にもつらくなってきている相談者。この状態を抜け出すにはどうすればいいでしょうか? FPの秋山芳生氏がお答えします。

老後資金を貯めたいのに、貯まりません。投資を始めたいけど、何から始めたらよいでしょうか?

今、仕事を3カ所掛け持ちしていますが、肉体的にも精神的にもちょっとつらくなってきています。ローンは無いです。

【相談者プロフィール】

・女性、44歳、パート・アルバイト、独身

・住居の形態:賃貸(北海道)

・毎月の世帯の手取り金額:19万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:0円

・毎月の世帯の支出の目安:18万円

【相談内容】

・住居費:5万5,000円

・食費:2万3,000円

・水道光熱費:1万円

・保険料:3,000円

・通信費:1万9,000円

・車両費:2万5,000円

・お小遣い:3万円

・その他:1万5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:1万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):150万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円


秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼 FP YouTuberの秋山芳生です。老後資金を貯めたいがなかなか貯まらない。そして、投資をはじめてお金を増やしていきたいけれど、何から始めたら良いか分からないということですね。3箇所の仕事を掛け持って、限界まで働かれている様子ですので、どのようにしたら良いかを一緒に考えていきたいと思います。

資産を増やす3つのステップ

資産を増やす上では当たり前の話になりますが、お金の流れを分解していくと、収入から支出を引いた残りが「収支」になります。この収支をいかにプラスにしていき、貯蓄を増やして、いかに余剰資金を増やしていくかが重要になります。

ステップに分けると、

ステップ1)収入をいかに増やすか
ステップ2)支出をいかに抑えるか
ステップ3)貯蓄から投資へ

という3段階になります。順番に解説していきます。

できれば成長産業に身を置いて時給アップを目指して

ステップ1は、収入をいかに増やすかについてです。現状3つの仕事を掛け持っていて体力的にも限界まで頑張っているとのことですので、なかなか難しいかもしれません。ですが、可能であれば、時給単価の良い仕事ができる職能を身につけることが大事だと思います。

収入を決める大きな要素は、働く業界が成長産業であることが重要です。時間をフル稼働させてたくさん働くことよりも、産業自体が伸びている業界に身を寄せられるかが時給アップの視点で重要になります。

例えば、動画編集などはパソコンやソフトを手に入れる必要はありますが、ニーズが高く時間もスキマ時間に行うことができるのでオススメです。介護関係も多くの人を募集しており、成長していく産業と言えます。

資格や技術を習得するまでは、自己投資としてコストが掛かってしまうことがあると思いますが、成長産業で働くということを意識して、その産業で働くスキルを磨くことで労働単価を上げられる可能性があります。貯蓄を取り崩しながら資格を取ったり、専門実践教育訓練給付金などの公的なサポート制度を利用するなどの方法もあるので、調べてみると良いでしょう。

また、健康で長く働くことも重要になりますので、無理をしすぎないことも大切です。現在の仕事状況がどのような雇用形態かはわかりませんが、体を壊してまで働かなければならないことはないはずです。

改善の余地がありそうな支出は?

ステップ2は、支出の改善です。家計の内訳から、特に固定費に改善できるポイントがないかをひとつひとつ見ていきたいと思います。

●住居費5万5,000円
住居費は5万5,000円ですが、手取り収入から考えると、29%と少し大きいかもしれません。できれば25%を目指していきたいところです。お住まいのエリアは通勤など条件もあるとは思いますが、北海道札幌で一人暮らしをする場合は2万円台後半から3万円前後でも物件は沢山あるようです。人生の3大支出である住居費が2万円抑えられるだけでも、収支改善は大きく進むと思いますので、御一考いただけると良いと思います。

●保険料3,000円
保険については、独身でいらっしゃるので、死亡保険などは必要ないでしょう。医療保険についても、現在150万円の預貯金があるので不要ではないかと思います。公的な保険に入っているので医療費は3割負担ですし、高額療養費制度もあります。一カ月に支払わなければならない医療費の上限は、ご相談者様の年収から考えると5万7,600円になりますので、医療費が払えないという事態にはならないと思います。思い切って医療保険もやめてしまうか、不安であれば3000円を医療用の貯蓄として貯めていくと良いと思います。

●通信費1万9,000円
通信費は、スマートフォン代と、家のネット回線代金でしょうか。スマートフォンの費用が仮に8,000円、ネット回線が6,000円として、さらに携帯端末の分割払いや、月額のサブスクリプションサービスなどがあるかもしれません。このスマートフォン費用を8,000円から3,000円以下に抑えるだけでも、年に6万円の改善に繋がります。今後40年スマートフォンを使う場合は、240万円の改善になります。老後資金としては大きな金額になると思いますので、通信状況を調べながら格安携帯に切り替えると良いと思います。端末費用が別途分割払いなどで縛りがある場合は一括で精算してしまうと良いでしょう。

仮に、住居費を3万円にし、保険を解約、通信費を5,000円改善できた場合は、月のキャッシュフローが3万8,000円改善します。すると、今までの毎月1万円の貯金と合わせて、4万8,000円の余剰資金が毎月生まれることになります。

十分な老後資金を作ることは可能

ステップ3は、いよいよ貯蓄から投資の段階です。

65歳を年金受取開始と考えても、老後まではまだ20年以上あります。仮に3万3,000円をつみたてNISAなどの投資にまわして、複利で5%の期待値で運用出来た場合、計算上は1,356万円以上になります。この間、残りの1万5,000円を貯蓄していくと、20年で360万円に。現在の150万円と合わせると、510万円の現金になりますので、1,356万円と合計すると1,800万円を超えます。老後2,000万円問題は、夫婦2人分の老後費用ですので、独身でいた場合は十分な老後資産といえると思います。

この状態を目指すには、まずは証券口座を開設する必要があります。インターネットでも口座を開くことができるので、口座を開き、つみたてNISAの設定をしていただければと思います。つみたてNISAは、運用益が非課税で利益に対して税金がかからないことや、やめようと思ったらいつでもやめることができるので、投資初心者にとって始めやすい制度だと思います。

仕組みを作って資産形成を楽にしよう

以上、3つのステップで余剰資金をつくり投資にまわしていくことで、資産を形成していけると思います。収入を高めることができると、資金が増えるスピードは早まっていくので、可能であれば自己投資をして、成長産業に身を置けるようにすると、長期で考えるとリターンが大きいかもしれません。

また、支出の改善は、変動費を気合と根性で少なくするよりも、固定費を見直すことで、改善後は努力をしなくても改善状態が継続できるのでおすすめです。

できるだけ長く続けやすい家計の仕組み化ができると、長期投資を成功させる原資を生みやすくなります。固定費の改善や投資の自動積み立てなど、自動的に資産形成ができるような設定をしておくと良いと思います。

以上、お金の不安が少しでも改善する参考になれば幸いです。

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