【東京五輪】酒類提供全面禁止 丸川五輪相「ステークホルダー」発言は何だったのか

丸川五輪相

急転直下の決断となった。五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)、武藤敏郎事務総長(77)が23日に都内で会見を行い、かねて話題となっていた競技会場での酒類提供について「全面禁止」の方針を発表した。

21日の東京五輪5者協議後、組織委が一定の制限を付けた上でアルコール販売を認める方針を検討していることが報じられた。居酒屋の酒類提供に厳しい規制がかかる中での〝五輪ファースト〟な対応には批判が殺到。さらに22日の丸川珠代五輪相(50)の「ステークホルダーの存在がどうしてもある」という発言が火に油を注いだ。大会の利害関係を示すステークホルダーには、多額の協賛金を拠出するスポンサー企業の存在も含まれる。当然、組織委と契約締結する飲料メーカー「アサヒビール」の意向があるのでは?との憶測を呼び、ネットでは同社への批判まで飛び出した。

同日中に組織委は「一部報道で、酒類の販売について、組織委の判断がスポンサー契約の影響を受けているかのような記載がありました(中略)スポンサー等の意向で販売方針を決めることはありません」と〝火消し〟したものの、後の祭りだった。

そんな中、この日午前に組織委ツートップが酒類提供禁止を正式に発表。記者団から「なぜ一夜にして真逆の決断になったのか」と問われた武藤事務総長は「飲酒(提供)が決まっていたのが変わったという趣旨でしょうが、そんな事実はありません。誤解のないように申し上げると、ずっと検討してきたのは事実ですが、5者協議の観客条件が決まった時にどうするか、いよいよ本格的に決断が必要になりました。地方会場にも関係するので各関連自治体の首長さんにも報告するのが適当だろうということで、今日をめどに決断しました」と、方針変更の経緯を説明した。

橋本会長、武藤事務総長はともに「アサヒビールさんも同じ意見」と強調し、酒類販売を検討した理由が同社の意向でないことを主張。だが、前述の丸川五輪相の「ステークホルダー発言」を考えると、スポンサーの意向でないとしたら組織委サイドから〝忖度〟したと受け取られても無理はない。

今大会は史上最高額となる約3480億円のスポンサー料を集めながら、コロナ禍という予想もしない事態に陥った。その上、前代未聞の「契約延長」という条件ものんでもらった。そんな状況の中、貴重な資金源を拠出してくれたスポンサーへの〝恩義〟として、最後まで可能性を探った可能性は十分考えられる。橋本会長は「アサヒビールさんにも大変なご心配をいただいた。ご協力があって東京大会が実現するものだと改めて感謝を申し上げたい」と切実に話したが、この言葉が苦渋の決断を物語っていた。

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