「佐藤輝に虎の4番譲れというのはナンセンス!」伊勢孝夫氏が不振の生え抜き・大山を推す理由

3打数2安打2打点でチームを勝利に導いた大山

阪神・大山悠輔内野手が24日の中日戦(バンテリン)で2本の犠飛を含む3打数2安打2打点をマーク。試合前時点で15打席連続無安打と不振にあえいでいた男がチームを6―0の勝利へと導いた。大山の得点圏打率はセ・規定打席到達25人中〝ブービー〟の2割1分7厘(24日現在)。勝負強さに定評のあるサンズ、佐藤輝らに「4番の座を譲るべき」との声も上がる中、本紙評論家・伊勢孝夫氏の見解は――。

【新IDアナライザー 伊勢孝夫】背中の張りによる登録抹消から5月下旬に一軍復帰した大山は、6月上旬ごろまで好調を持続。この時期はリフレッシュ明けということで体も軽く、動きが良かったのだろう。今は連戦の疲れが徐々に再度蓄積してくるタイミング。ファームから一軍に復帰した選手が、よくはまりがちな「落とし穴」の時期だけに、私はさほど心配していない。この日は得点機で2本の犠飛。最低限の仕事もできたことだし、これで吹っ切れたのではないか。彼は根っからのスロースターター。夏場から秋にかけてきっちり調子を上げてくれると思っている。

大山がいい悪いの問題ではなく、佐藤輝の打者としてのスケール、迫力はチーム内でもずば抜けている。私も長年数えきれないほどの打者をプロ野球界で見てきたが、佐藤輝は清原和博(巨人ほか)や松井秀喜(米ヤ軍ほか)らすら凌駕し得る素材。だがそれでも、今の阪神打線の中心は大山。大山こそがチームを背負わねばならないのだ。

一部では「将来も見据え、勝負強い佐藤輝に今から4番の座を託し、得点圏打率の低い大山は5番、6番に下げるべき」という声もあるそうだが、これはナンセンスな考えだ。

もしそんなことをすればどうなるか。相手バッテリーは4番・佐藤輝に対して「歩かせても構わない」という姿勢で臨み、5番打者(大山、サンズ)との勝負を選択するに決まっている。佐藤輝はまだ「打ちたい、打ちたい」という考えが前面に出てしまっている段階。突っかかって際どいコースのボール球に手を出し凡退を重ねれば、好調を持続している現在の打撃を崩すことになってしまう。

助っ人のマルテやサンズもいい仕事をしてくれているが、結局のところ打線のキーマンは生え抜きで主将も務める大山だ。阪神が今年優勝できれば、佐藤輝やドラ6ルーキーの中野はより大きく成長できるだろう。そうすれば2連覇、3連覇と阪神の黄金時代が到来すると私はみている。

そのためにも今は大山がチームを背負わねばならないのだ。彼の奮起と復調を私も心から祈っている。

(本紙評論家)

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