被ばく医療人材育成へ 長崎大に「研修センター」開所

長崎大学病院内に開所した「被ばく医療総合研修センター」。被ばく患者の診療や処置もできる=長崎市坂本1丁目

 長崎大は24日、全国的に不足している被ばく医療従事者の人材育成を目的とした「被ばく医療総合研修センター」を同大学病院内に開所した。除染室や処置室、内部被ばく測定装置など専門的な設備を備え、平時は学内外の担当スタッフの実習などを行い、九州電力玄海原発(佐賀県)と同川内原発(鹿児島県)で事故が起きた場合には被ばく患者への初期対応も行う。
 2011年の東京電力福島第1原発事故(福島県)を受け、長崎大は15年、原子力規制委員会から九州で唯一、原子力災害時に専門的な診療を担う「高度被ばく医療支援センター」(全国5カ所)と、医療チームの派遣調整をする「原子力災害医療・総合支援センター」(同4カ所)の指定を受けた。これまで専用施設はなかったが、同研修センターの新設により二つの機能が拡充される。
 同研修センターは第3中央診療棟を改修した。整備費約5億6千万円は国が全額補助。延べ床面積約2千平方メートル。1階には、被ばく患者の重症度や治療の緊急度を判断するトリアージ室、除染室、初療・重傷者処置室などがある。2階には、染色体異常を見つけて被ばく線量を推定する設備、3階には手術室を転用した実習室もある。
 研修を受けるのは学内スタッフのほか、本県、福岡、佐賀、鹿児島県内にある七つの原子力災害拠点病院の医師や看護師、放射線技師ら。長崎大学病院や同大原爆後障害医療研究所の専門家らが講師を務める。
 開所式には、原子力規制委の更田豊志委員長らもオンラインで参加。河野茂学長は「前身の長崎医科大学は原子爆弾で被災した世界で唯一の医科大学。原子力災害の医療体制の構築に貢献したい。それが長崎の歴史的な使命」とあいさつした。


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