元燕コーチが教え子に苦言 好調だったエース小川のKO劇「原因は配球にある」

ヤクルト・小川泰弘(左)と中村悠平【写真:荒川祐史】

巨人の“読み勝ち”小川-中村のバッテリーに足りなかった工夫

リーグ3位と健闘しているヤクルトは26日、本拠地・神宮球場で行われた巨人戦で、先発のエース・小川泰弘投手がまさかの3回途中6失点KO。巨人に連敗を喫した。チーム勝ち頭で、ハーラートップにもわずか1差の6勝を挙げ、この日も立ち上がり好調に見えた小川が、あっという間に崩れたのはなぜか。現役時代にヤクルトなど4球団で捕手として計21年間活躍した野球評論家・野口寿浩氏が解き明かす。

小川は1回、先頭の松原にカウント3-2から外角低めの145キロ速球を振らせ三振に仕留める快調なスタート。2死後、丸に粘られ9球を要して四球で歩かせ、岡本和にも詰まった当たりの右前打を許し一、三塁とされたが、坂本をシュートで左飛に打ち取り、無失点でしのいだ。

ところが2点リードの2回、先頭の梶谷に右前打され、北村に右翼線二塁打、大城にも左翼線二塁打を浴び、3連打で同点とされてしまう。野口氏は「小川の調子自体は良かった。あれだけの球を投げていたのに打たれたということは、要因は配球にあったと言わざるをえない」と見た。

この日、小川と中村悠平捕手のバッテリーの配球は、ファーストストライクがほとんど外角、全体的にも外角が多かった。「2回は右打者の北村にも、左打者の大城にも、外角いっぱいのコースの球を踏み込んで逆方向へ打たれた。完全に読まれていた」と指摘する野口氏は、2017年に古巣ヤクルトの2軍バッテリーコーチ、翌18年に同1軍バッテリーコーチを務めた経験がある。

予想以上の健闘見せるヤクルト TGへの苦手意識がCSへの不安材料

それだけに「おそらく中村にしてみれば、『外角球の調子が良かったから多投させた』ということなのでしょう。実際、球威があったし、コーナーに制球され、変化球も低めにきていた」と指摘。「しかし、在任中に中村にも言ったことですが、出来のいい球を続けるだけでは手詰まりになる。その球を生かすためにも、対になる球が重要になる。この日の場合、外角球を生かすために、ボールでもいいから、もっと効果的に内角球を見せることが必要でした」と苦言を呈さずにいられなかった。

集中打を浴びた小川は、徐々に変化球の精度も失い、3回1死一、二塁で北村に真ん中に浮いたフォークを左翼席中段まで運ばれ、早々とマウンドを降りた。

今季のヤクルトは投手陣が駒不足で、開幕前の下馬評は低かった。しかし、ふたを開けてみれば、21歳の4番・村上らの成長が著しく、2位・巨人にわずか1.5ゲーム差、首位・阪神にも5ゲーム差の3位につけている(26日現在)。

野口氏もOBとして燕軍団には並々ならぬ思い入れがあるが、一方で「本当に良く頑張っていると思うけれど、優勝争いとなると、今季も阪神に1勝7敗1分、巨人に2勝6敗1分と直接対決に弱い(同日現在)。ゲーム差をコントロールできるのは、やはり直接対決ですから、このままでは不利な展開になる」と不安を拭えない。なるべく早く苦手意識を解消しておくに限る。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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