勝田貴元2位、サファリで初表彰台! 僚友オジエと1-2フィニッシュ/WRC第6戦ケニア

 6月27日、WRC世界ラリー選手権第6戦ケニアの競技最終日はデイ4のSS14~18が行われ、前日までのトップが朝のステージで姿を消す波乱が起こるなか、TOYOTA GAZOO Racing WRTのセバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)が逆転優勝を飾った。また、この最終日を総合2番手で迎えた勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)が総合2位でフィニッシュし、WRC総合で自身初となる表彰台を獲得した。

 WRCを代表するイベントながら長らく世界選手権としての開催が途絶え今年、2002年以来、19年ぶりにWRCイベントとしての開催が実現したサファリ・ラリー。石原裕次郎主演の映画『栄光への5000キロ』の題材にもなったこのラリーは、開催規模こそかつて大会と比べて縮小されたものの、今週末に起きたドラマはその分色濃かったと言っても過言ではないだろう。

 24日(木)にケニアの首都ナイロビで開幕した『サファリ・ラリー・ケニア』は同日、スーパーSS形式でのSS1が行われ、翌25日(金)から広大なアフリカ大陸を舞台とした本格的なグラベル(未舗装路)ラリーをスタートさせた。

 すると、この実質的な初日からドラマが巻き起こる。今戦には最上位クラスを戦うWRカーが11台エントリーしていたが、その内の5台がアクシデントに見舞われ、戦線離脱を余儀なくされたのだ。その中には選手権ランキング2位につけるエルフィン・エバンス(トヨタ・ヤリスWRC)や、この日の最終ステージまで総合2番手につけていたカッレ・ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)も含まれていた。

 26日(土)には最終ステージ(SS13)で天気が急変。トップグループが突然の雨に襲われ、オジエと表彰台を懸けた争いを繰り広げていたオット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)が、フロントスクリーンが曇るハプニングに襲われ最終日を前にして大きくタイムを失っている。

「どんなことも起こり得る」TOYOTA GAZOO Racing WRTのヤリ-マティ・ラトバラ代表がそう表現したサファリの厳しさは、2日目に総合首位に立ち、そのまま最終日を迎えたティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)にも襲いかかる。

アドリアン・フルモー(フォード・フィエスタWRC) 2021年WRC第6戦ケニア
右リヤサスペンションの損傷により総合首位を走りながらリタイアとなったティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC) 2021年WRC第6戦ケニア

■日本人ドライバーのWRC表彰台獲得は篠塚建次郎以来、27年ぶり

 総合2番手につける勝田に対し57.4秒のアドバンテージを持ち、今季初優勝への期待を込めて5本のステージで争われる競技最終日に臨むことになったヌービル。しかし、この日のオープニングステージで彼のマシンは悲鳴を上げた。ベルギー人がドライブするヒュンダイi20クーペWRCは、SS14で右リヤサスペンションにダメージを負ってしまう。
 
 彼はこのステージを走りきったものの、最終日は日中のサービスがないこともあり修復は不可能。そのため、ラリー最終日に総合トップを走りながらリタイアを喫することになった。

 代わって総合トップに立ったのは、デイ2で総合2番手に浮上し最終日までそのポジションをキープしてきた勝田だ。ヤリスWRCを駆る彼はSS15終了時時点で自身初めてラリーの総合首位に立った。しかし続くステージで、総合2番手に浮上したオジエに0.8秒差を追いつかれ、SS17では反対に8.3秒差を追いかける立場に。

 全長10.56kmの最終パワーステージ“ヘルズゲート2”、ここではステージ8番手タイムを記録した勝田。この結果、オジエと21.8秒の総合2位が確定し自身初のポディウムフィニッシュを決めてみせた。日本人ドライバーによるWRC総合の表彰台獲得は、1994年のサファリで2位となった篠塚建次郎(ミツビシ・ランサーエボリューション)以来、27年ぶりの快挙だ。

 最終ステージを前に首位の座を奪ったオジエは、SS18を4番手タイムで走破しコリン・マクレーに続く新しいサファリ・ラリー・ウイナーとなった。この勝利で8度目のシリーズチャンピオンを目指すレジェンドは、早くも今シーズン4勝目をマーク。チャンピオンシップでのリードを34ポイントに拡げている。

 前日のデイ3で総合4位にドロップしたタナクはパワーステージでベストタイムを刻むなど追い上げを図るも、前を行く勝田とオジエを捉えるには至らず。ヌービルのリタイアによってひとつ順位を上げ、総合3位でフィニッシュした。タナクの表彰台獲得は、優勝した第2戦アークティック・ラリー・フィンランド以来、4戦ぶりだ。

 総合4位はこの日のSS16で自身初のステージ優勝を飾ったアドリアン・フルモー(フォード・フィエスタWRC)。チームメイトのガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)を逆転し自己最高位を更新している。若手のグリーンスミスは総合5位となった。6位は2日目にデイリタイアとなり、3日目に再出走を果たしたトヨタのロバンペラ、僚友のエバンスは総合10位、ロレンツォ・ベルテッリ(フォード・フィエスタWRC)が総合11位、ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)が総合12位となっている。

 WRCの次戦第7戦『ラリー・エストニア』は7月15~18日、東欧のエストニアで開催される予定だ。

セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC) 2021年WRC第6戦ケニア
オット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC) 2021年WRC第6戦ケニア
ガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC) 2021年WRC第6戦ケニア
日本人ドライバーとして篠塚建次郎以来、27年ぶりにWRCの総合表彰台を獲得した勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)

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