有観客試合で栄える! 侍指揮官も絶賛したソフトバンク・松田“唯一無二の存在感”

お立ち台で「1、2、3マッチ!」と雄たけびの松田(左)と東浜

数字に表れない尊さをチームの誰もが認めている。ソフトバンク・松田宣浩内野手(38)だ。6月30日の西武戦(北九州)にチームは9―1で大勝。松田は3回に中押しの9号2ランと5回に見せた三塁打での激走でファンを沸かせ、打のヒーローとしてお立ち台に上がる活躍だった。

「僕はお客さんの前でいい当たりを打ちたいと思って、常に練習している。お客さんの前で打席に入れる、プレーできる喜びを感じてこれからもバットを振っていきたい」。先月20日まで本拠地ペイペイドームの主催試合は無観客。この日は、久しぶりに熱烈な地元ファンが入る準本拠地での有観客ゲームだった。プロ生活19年、名球会メンバーである小久保ヘッドは言う。「アイツはお客さんが入らんとダメなタイプだから」。また、柳田もかつて真顔でこう語っていた。「松田さんみたいな人を『ミスタープロ野球』と言うんです。ホンマにすごい人です」。ファンの存在を意識し、グラウンドに立ち続ける間は野球のもう一つの側面であるエンターテインメントを追求する――。結果が出ず非難を受け、心が痛んでいても振る舞いは決して変わらない。気遣いができて、練習熱心で「ファンあってのプロ野球」を体現。柳田が心から松田を尊敬する理由だ。

原風景は幼少期の甲子園。両親に連れられて三塁側から阪神―巨人の「伝統の一戦」をよく観戦した。華やかなプレーに心躍らせ、プロ野球の真の魅力を知っているから今のスタイルを貫く。何万という人に見られて、ヤジを飛ばされても「なにくそ」で魅せる野球選手に憧れた。

今春宮崎キャンプでは練習の休憩時間に誰もいない観客席に立ち寄る姿があった。「お客さんにはこんな風に見えてるんやな」。たとえ非難の的になろうが、宿命と心得て力に変える。現代の「ミスタープロ野球」。五輪選出はかなわなかったが、侍ジャパン・稲葉監督も絶賛した唯一無二の存在感。数字では語れないすごみが、熱男にはある。

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