古里に興味と愛着を 『ジオ学習』島原半島で参加校拡大へ 

地元の自然遺産などを紹介するジオ学習=雲仙市立多比良小(島原半島ジオパーク協議会提供)

 世界的に貴重な地質遺産が残るエリアだとして、国内初の「世界ジオパーク」に認定された島原半島。地元の子どもたちは、火山と人間の共生について学ぶ「ジオ学習」に取り組んでいるが、半島内でも地域によって濃淡がある。雲仙・普賢岳の大火砕流から30年。このジオ学習を、半島全域に広めようとする動きが出ている。
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 「『土黒(ひじくろ)』という地名は砂鉄が取れる真っ黒な土地柄が由来なんだよ」
 6月18日、雲仙市国見町の市立多比良小。6年生の児童34人は、講師で島原半島ジオパーク協議会の森本拓専門員(28)の解説にすっかり引き込まれた。同校が昨年度から取り入れたジオ学習の一幕。
 火山は身近な存在ではないが、「土黒」はよく見知った地名。「地元の歴史が火山とつながっていると初めて知って勉強になった」「火山災害の被害と恵みの二つが合わさった大地に自分が立っていると思うと、この地が美しく見えてきた」などと、児童らは口々に感想を語った。

島原半島に分布する主要ジオサイトを表示した地図

 火山がつくり出した「ジオサイト」(地質的な見どころ)など地元が誇る貴重な自然遺産について理解を深める「ジオ学習」。島原半島ジオパークのツアーや教育プログラムなどの運営に当たる同協議会は、地元の小中学校を中心に、専門員らによる出前授業などを実施している。
 ここ10年で見ると、2012年度が37回実施し、延べ参加児童・生徒数は約3260人。これに対し、20年度は81回と倍増。参加者数も2割増の約4030人となった。
 ただ、講師派遣の依頼は半島南部の学校に集中。北部にある雲仙市の学校などへの派遣はほとんどなかった。約50万年前の雲仙火山噴火当初の地層が観察できる龍石海岸(南島原市)や、雲仙・普賢岳の噴火に伴い誕生した溶岩ドーム「平成新山」(島原市)など比較的目立つジオサイトは多くが半島南部周辺にあるからだ。
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 そこで同協議会は、半島北部周辺の参加校を増やすため、ジオ学習の内容やプランをまとめたパンフレットを初めて作成。本年度、島原半島の島原、南島原、雲仙3市教委を通じて各小中学校に配布し、授業への導入を働き掛けている。

島原半島ジオパーク協議会が作成したパンフレット「学習のしおり」

 通学路を歩きながら学校周辺にあるジオパークの魅力を伝えたり、講話を通じて半島の成り立ちや火山災害の脅威を説明したりする内容。4月以降、これまでジオ学習に取り組んだことがなかった7校も参加し、成果を上げている。
 森本専門員は「これまで以上に教育への活用を推進することで、子どもたちが古里に興味と愛着を持ち、魅力に気付くきっかけになるジオを伝えていきたい」と話す。


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