【名古屋場所】白鵬さらなる逆風 照ノ富士&貴景勝「W横綱昇進」臨む声を完封できるか

名古屋場所に進退がかかる白鵬

大横綱か、新横綱か。大相撲名古屋場所初日(4日、愛知県体育館)、横綱白鵬(36=宮城野)が小結明生(25=立浪)を掛け投げで退けて白星発進した。6場所連続休場明けで、自らの進退をかけて臨む正念場。角界内では引退を見越したかのように新横綱誕生を求める機運が高まっている。綱取りに挑む大関照ノ富士(29=伊勢ヶ浜)に加え、大関貴景勝(24=常盤山)とのダブル昇進の可能性も浮上。白鵬は引退危機を脱して下克上を阻止することができるのか。

白鵬が引退危機脱出へ向けて好スタートを切った。明生を相手に右で張ってから左四つ。相手の寄りに後退する場面もあったが、最後は不安を抱える右足一本になりながら鮮やかに掛け投げを決めた。取組後は「経験とうまさで(自分が)ちょっと上回ったのかな。館内の拍手? 気持ちよかったです」と珍しく興奮気味に振り返った。

3月に古傷の右ヒザの手術を受け、地道にリハビリと稽古を続けて土俵に帰ってきた。かねて今場所で進退をかける意向を示していただけに「いろんな思いがあるし、しゃべったら今日、終わりませんからね。『ただいま』という感じ」と安堵感も漂わせた。勝負後はガッツポーズのようなしぐさを見せるほど感情を表に出していたが、秘めた思いについては「それは千秋楽に言います」とはぐらかした。

もちろん、まだ初日を終えたばかり。横綱審議委員会(横審)からは「引退勧告」に次いで重い「注意」を決議されており、今場所は最低でも皆勤した上での優勝争いが求められる。限界説を封じ込めるためには、千秋楽まで負けられない戦いが続く。その白鵬の進退問題は、くしくも照ノ富士の綱取り挑戦とも重なった。

今場所かどうかは別にして、大横綱の引退が近づいてきていることは確か。角界内では新たな横綱誕生を待ち望む機運が高まっている。伊勢ヶ浜審判部長(60=元横綱旭富士)は照ノ富士について「成績もずっと安定している。(春場所と夏場所で)優勝も2回続けてしているし(優勝に)準ずる成績であれば十分可能性はあるのでは」と高評価。仮にV逸でも優勝に準ずる好成績なら昇進が濃厚だ。

新横綱の待望論は、それだけではない。貴景勝も先場所は12勝3敗で照ノ富士との優勝決定戦に進出。ハイレベルな成績の優勝であれば、こちらも横綱昇進の可能性がある。実際、横審委員の間からも両大関のダブル昇進を望む声が出ているという。同時昇進が実現すれば戦後では1961年九州場所の柏戸(47代)と大鵬(48代)、70年春場所の玉の海(51代)と北の富士(52代)以来、3組目となる。

もちろん、白鵬も簡単に番付の頂点の地位を譲るつもりはない。これまで何度も挑戦者の前に壁となって立ちはだかり、下克上を阻止してきた。大横綱が健在ぶりを証明するのか、新横綱が誕生して新たな時代が本格的に幕を開けるのか。今後の土俵の行方を左右する15日間が始まった。

【1年4か月ぶりの地方開催】今場所は観客数の上限を会場定員の50%の約3800人で実施。力士らの多くは番付発表後も東京で稽古を行い、直前に名古屋入りして初日を迎えた。昨年7月場所は新型コロナウイルス感染拡大の影響により東京・両国国技館で開催。今年は国技館が東京五輪のボクシング会場として使用されるため、1年4か月ぶりの地方開催となった。

大関正代(29=時津風)は「(東京とは)違う感覚で相撲が取れた。応援してくれるファンがいるので、地方場所が盛り上がれば」。幕内北勝富士(28=八角)も「久しぶりの地方場所で楽しんでいけたら」と前向きにとらえていた。

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