【追う!マイ・カナガワ】横浜の「3メートル級バス停」低くなってた 読者の問題提起が改善に、でも…

【1】約3メートルあった「浅間町車庫前」のバス停

 今年1月7日に掲載した「横浜に3メートル級のバス停 なぜ?」のバス停が改善されたという。疑問を投稿した横浜市泉区の会社員渡辺聡さん(46)から「バス停が背の低いものに変更されました。誰もが暮らしやすい街に一歩前進です」と、「追う! マイ・カナガワ」取材班に連絡があった。記者は再び、現場へと向かったが…。

 渡辺さんが昨年末に寄せた悩みは、同市西区の「浅間町車庫前」など四つのバス停が高さ約3メートルもあり、車いすユーザーや子ども、高齢者に使いづらいというものだった。

 取材班が同市交通局を取材すると、同局は主にバスや地下鉄の乗車収入で経営している地方公営企業のため、「コロナ禍で乗車収入が赤字になり、すぐに新しい物に変更できるかは分からない」と説明。同局のバス停が約30種類もあるため、3メートル級が導入された経緯を含めバス停設置や管理などで不明点が多いといった問題があることも分かり、マイカナで報じていた。

 今回、あらためて同局に聞くと、本紙の報道を受けて「浅間町車庫前」のほか、同区の「高島町」「花咲橋」「雪見橋」を合わせた4バス停は、すぐに約2メートルの標準タイプに取り替えたという。港南区の「笹下港南中央通」のバス停も3メートル級だったので同様に変更。同局によると、「在庫が5本あったので、何とか購入しなくて済んだ」という。

 問題のバス停は市営バスのほか、神奈川中央交通や相鉄バスの路線が通る交通の要所にある。掲示する時刻表が膨大でバス停も高くなっていたが、同局の担当者は「時刻表を縮小印刷し、バス停の高さを抑えても全部掲示できるように工夫した」と教えてくれた。

 解決してよかった─。そんな思いで記者が新しいバス停を見に行くと、信じがたい光景に再び出合うことになった。

■車道に出ないと時刻表は見えない?

 記者が目にしたのは、道路際すれすれに平行に置かれ、車道に出なければ時刻表が見えないバス停だった。

 新たに設置された横浜市西区の「雪見橋」「花咲橋」「高島町」のバス停。確かに高さは改善されていたが、時刻表は両面に掲示され、片側の面は車道側に回らなければ見えない。

 これでは時刻表を見ようとする人が、接近してくる車両と接触する事故が起きてしまうかも、と新たな不安がよぎった。記者は道路側の時刻表を見ようと試みたが、時刻表にばかり目を配っていると、後方から来る車両に気付けず命の危険すら感じた。

 車いすユーザーの方や、お年寄りは掲示を見られないのでは。後日、投稿者の渡辺聡さんと、渡辺さんが所属する市民グループメンバーで、車いすユーザーの服部一弘さん(57)にも現場を見てもらった。

 「高さは改善されたけど、この置き方では、移動に制約のある方や子どもにとっても、すごく危ない。話にならない置き方」。服部さんは肩を落とした。

 現場を初めてじっくり見た渡辺さんも驚いた様子で「高さが変わってうれしかったけど、当事者の意見をヒアリングして、誰もが使いやすいバス停にする視点が欠けている。時刻表の縮小掲示で工夫しているが、字が小さいと見えにくい人もいる」と語気を強めた。

■当局すぐ視察・改善「市全体で考えていく」

 現場を検証後、新たに感じた問題点を市交通局に問い合わせた。担当者は「現場を確認していないので、何とも言えない」と話していたが、記者が命の危険も感じたと伝えると、同局の課長自らすぐに視察に出たという。

 その後、「確認が足りなかった。設置の仕方に問題があった」と連絡があり、バス停が道路と垂直になるよう置き方を直したと連絡があった。

 同局は「みなさんに気持ちよくバス停を利用してもらいたい。今回のご指摘、非常に感謝しています」とした上で、「バス停は、道路の状況や立地条件によっても設置の仕方が変わる。交通局だけでは解決できない部分もあるので、横浜市全体で考えていきたい」と約束してくれた。

 渡辺さんの投稿をきっかけに取材したバス停の現状。1月の記事掲載後は、同市のバス運転士からも「一乗務員の立場ではすぐにどうにもできないですが、新聞の力で動かしてもらえないかと思います」との声が寄せられた。誰もが使いやすいバス停になるよう報道を続けたいし、市交通局には、多くの人の声を聴いて、一緒に考える機会もぜひつくってほしい。

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