全国高校野球長崎大会 データで見るポイント 投打の大原則が勝敗分ける

シード校の今季主要3大会の投手成績

 夏の高校野球が8日に幕を開ける。各校がそれぞれの目標へ挑む中、今年はどんなドラマが生まれるか。試合を左右するポイントは攻守両面で多々あるが、近年の傾向や今季の成績から分析すると「投手の制球力」「打者の積極性」という投打の大原則が、そのまま勝敗に結びつくケースも少なくない。開幕直前、各種データを基に大会を展望する。

 全国的に夏は「打高投低」の傾向が目立つ中、長崎は「守り合い」の色が濃い。各都道府県の優勝校の多くは、地方大会でチーム打率3割中盤~4割超を記録しているが、長崎代表が過去10大会で4割超を記録したのは2011年の海星だけ。2割台や3割1分に満たない年が4回と低調だ。
 これはあくまでも数字上であり、バットで甲子園を沸かせたチームもあった。だが、やはり打線は水物という言葉もある。結果、県代表の座をつかむための絶対条件は、バッテリーを中心にした守備力となってくる。
 それを踏まえると、今大会で有力なのは、第1~3シードの大崎、長崎商、小浜。昨秋と今春、前哨戦のNHK杯の投手成績は、他校を大きくリードしている。
 センバツに出場した大崎は昨秋とNHK杯計13試合103回で与四死球16(1試合平均1.23)。続くのが小浜で3大会計17試合145回で25(同1.47)、長崎商も計16試合135回で46(同2.88)と安定している。
 直近のNHK杯県大会を見ても、多くの試合で与四死球数がそのまま勝敗を分けている。相手より与四死球が多くても勝ったのは16試合中4試合。このうち1試合は、与四球1の大崎が与四球ゼロの諫早農に2-1で競り勝つハイレベルな内容だった。裏を返せば、この諫早農のように無駄な走者を出さなければ、上位シード校が相手でも勝機が広がってくる。
 レベルが上がってくる準々決勝以降は、そうした制球力のある投手をいかに攻略するかが問われてくる。その攻撃で重要なのが打者の積極性だ。データ上、早いカウントからバットを振った方が結果につながっている。
 NHK杯県大会で出た安打全261本中、追い込まれる前に打ったのは7割弱の177本。その半数以上がファーストストライクを捉えていた。確率上は2ストライクからの安打も約3割あるが、それもバットを積極的に振って、ファウルでタイミングを合わせて微修正-、というケースが見て取れた。
 もちろん、好投手は一つ目や二つ目のストライクの取り方も工夫する。内外ぎりぎりの直球、直球との見分けがつきにくいスライダー系やチェンジアップなどを有効に織り交ぜている。打者としては狙い球や捨て球を絞ることも大事だが、振る数が多い方が確率は上がるのは当たり前。ファーストストライクを迷わずに振り抜くことが、安打を生む近道と言ってもいいかもしれない。
 そんな「フォアボールを出さない」「ストライクゾーンのボールはバットを振る」という姿勢に加え、緻密に練り込んだ戦術が一発勝負のトーナメントでぶつかる夏。ここに毎年の勝者が口をそろえる「思いの強さ」を含めて、すべてが拮抗(きっこう)した試合が続いてくれれば…。今夏は例年以上に盛り上がるかもしれない。レベルの高い大会になることを期待している。

NHK杯県大会の安打の内訳

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