「予定は未定」状態

 〈予定は未定〉というのは〈予定は未定にして決定にあらず〉が縮まった形という。予定とは、必ずそうすると決まったものではないから臨機応変にやればいい。元々そんな意味らしい▲実際には、予定通りにいかない時の方便によく使われる。「予定は未定。思い通りにはならないもんさ」と。仕事がはかどらない時の弁解やら、遅刻の言い訳やら、都合よく使ってきた覚えがある▲列島はいま、前代未聞の〈予定は未定〉状態ではないかと、ワクチン接種を巡る混乱ぶりを見ていて思う。新型コロナのワクチン不足の不安から、自治体が次々と新しい予約を止めたりしている▲長崎市は、この先ワクチンがいつ、どれくらい届くのか読めないとして、59歳以下の新たな予約を先送りする。佐世保市は集団接種の予約枠を減らすという。職場接種では、受け付けた予約の取り消しもあった▲接種対象の全員分を9月末までに調達できる、1日100万回接種を-。せかされた揚げ句の〈予定は未定〉では、自治体、企業にしてみれば「はしご外し」に違いない▲在庫がたまっている自治体もあるとみられる。接種の遅れ、先送りで割を食うのは国民であり、在庫の偏りを正すのは国の仕事だろう。不確かな予定で自治体をせき立て、国民を惑わすのは、もうおしまいに。(徹)

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