介護現場を動画で「見える化」 ICTシステム開発 情報共有と連携、円滑化 長崎のリハビリサービス業・トータル社

アイセラピーを使い、利用者の生活状況を確認し合うスタッフ=長崎市、リエゾン長崎

 長崎市のリハビリサービス業「Total Habilitation System(トータル ハビリテーション システム)」は、介護現場を動画で「見える化」し、複数の職種間の情報共有を円滑にする情報通信技術(ICT)システム「iTherapy(アイセラピー)」を開発、製品化した。川副巧成代表(49)は「質の高い介護を提供するため、介護従事者が業務に集中できる環境づくりに役立てたい」と話した。
 アイセラピーは、6月に福岡市で開かれた「第8回ヘルスケア産業づくり貢献大賞」(九州ヘルスケア産業推進協議会主催)で特別賞を受賞。入賞は本県で3団体目。
 トータル社は2009年設立。ケアハウス「リエゾン長崎」などを運営する社会福祉法人「春秋会」(江川町)のグループ会社。柳田町のコミュニティーカフェを拠点に、リハビリデイサービスやリハビリ訪問看護などを展開する。
 介護現場では、医師や看護師、理学療法士、介護福祉士など複数の専門職が関わるため、利用者に関する情報共有と連携、業務の属人化が課題とされている。情報共有のための会議や資料作成の時間も多く、介護従事者の長時間労働の要因になっているという。
 アイセラピーは、自立した生活を目指す利用者の状況を動画で撮影した後、心身状態を示すイラスト入りのコード(140項目)をスマートフォンやタブレット上で選び、それに関連したアドバイスが文字情報で表示される仕組み。それぞれの従事者が注意点を入力する項目もあり、画面に表示される映像と文字情報を通して、引き継ぎや資料作成時間を効率化し、労働生産性の向上を実現した。

第8回ヘルスケア産業づくり貢献大賞で特別賞を受賞した川副代表(前列右)とスタッフ=長崎市、リエゾン長崎

 理学療法士の荒木幸枝さんは「他の職種との連絡や相談、報告がしやすくなった」、看護師の山口真理子さんは「医療的な専門用語でも、イラスト入りのコードで分かりやすい」、介護福祉士の大賀由紀さんは「1人の利用者に複数のヘルパーが関わるとき、言葉での説明が難しい場合も動画で分かる」とそれぞれメリットを話す。
 川副代表は「着想から約10年。利用者の自立生活を支えるとともに、介護従事者のスキルアップを目指し、試行錯誤を繰り返した。イラスト入りのコードで必要な支援内容を示しているので、外国人の介護従事者とのコミュニケーションを円滑にすることもできるだろう」とし、さらに使いやすいシステム構築を目指している。

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