やさしい社会へ 長崎県の再犯防止計画 運用始まる 就労・福祉支援など

県再犯防止推進計画の主な項目

 再犯者数を減らすことで犯罪全体の抑止を図る長崎県の再犯防止推進計画が、本年度から5カ年で運用が始まった。県が関係機関と連携し、犯罪をした人の就労先の確保や福祉的な支援などをすることで基本理念「だれ一人取り残さない“やさしい社会”」の実現を目指す。
 計画は、2016年に施行された再犯防止推進法を基に策定した。同法は国と自治体の責務について「再犯防止に関する施策を実施する」と明記。国が策定した計画を基に、各自治体にも計画を定める努力義務が課せられた。
 本県の計画は、25年度末までに県内の刑法犯検挙者中の再犯者数を714人以下(19年比20%減)にすることを成果指標に掲げた。
 県の骨子は▽関係機関・団体等との連携体制の構築▽就労・住居の確保▽保健医療・福祉サービスの利用の促進等▽学校等と連携した修学支援の実施、非行等の防止▽犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導のための取り組み等▽民間協力者の活動の促進、広報・啓発活動の推進-の六つ。骨子に県の施策を組み込んだ。
 出所者を雇用する「協力雇用主」への支援制度や、保護観察対象者を県の会計年度任用職員として採用する施策は本県独自の取り組み。また、社会福祉法人南高愛隣会(諫早市)が運営する「県地域生活定着支援センター」と県が国のモデル事業として取り組んだ捜査・公判段階から介入する「入口支援」についても本年度、事業化した。
 県福祉保健課の担当者は「県が実施するさまざまな施策が再犯防止の文脈と結び付いた」と意義を説明する。計画には、既に実施している施策も多い。例えば高齢者や障害者への福祉の提供はしており、「サービスが必要な人の中には犯罪をした人も含まれると認識する必要がある」。
 一方、県内21市町で計画に当たるものを策定した自治体は雲仙、西海両市のみ。自治体からは「内容が幅広い部局にまたがるため策定が進みにくい」との声もあるという。県の担当者は「犯罪をした人が地域の一員として暮らしていくこと、それを支える地域の人たちがいることを知ってほしい」と語る。

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