神奈川・湯河原にも迫った土砂 避難できず紙一重の住民も 大雨被害から1週間、全容なおつかめず

岩や木が流れ込んだ道路。民家のフェンスなどがなぎ倒されたという=湯河原町宮上(同町提供)

 梅雨前線による記録的な大雨で、神奈川県湯河原町では山間部から流れ出た雨水と土砂などが家々に迫る危険な状況となっていた。隣接する静岡県熱海市のような大規模な土石流は起きなかったものの、避難のタイミングを逸し、紙一重の状況に不安を抱いた住民は少なくない。県内で大雨の被害が出てから10日で1週間。全容はなおつかめず、暮らしへの影響は長期化しそうだ。

 「滝のような雨になり、土の臭いも強くなった。逃げ遅れたら大変だと思い、決意した」

 湯河原町宮下の男性(77)は3日午後、近くに住むきょうだいと一緒に車で避難した。向かったのは、約2キロ離れた町防災コミュニティセンター。既に10人ほどが身を寄せていたが、テントで仕切られたスペースで安全に過ごすことができた。「2年前の大型台風の時も避難した。その経験が今回の行動を後押ししたのかもしれない」。夜に帰宅すると、家の前の道には石や泥が堆積していた。

 一方、同じ宮下の女性(75)は避難のタイミングを逃した。「自宅前は足首が浸かってしまうぐらいで、大きな石もごろごろと流れていた。外に出られず、車でも避難できなかった」。恐怖心を抱いたまま自宅で雨が収まるのを待ち、「4日の夕方にようやく水の流れが止まった」という。「1人暮らしなので誰も頼れない。家の前は私道だが、土砂でふさがっている限り出られない」と、今後への不安を口にする。

 3日午前2時ごろに大きな音が聞こえたという同町宮上の男性(65)と妻(60)は、山側から流されてきた1メートルほどの岩と丸太などを目撃。不安な一夜を2階で過ごした。自宅前に止めていた車に傷が付いていたが、こうかみしめる。「命と家が助かっただけでもありがたい」

 町は3日未明、町内全域に警戒レベル4の避難指示を発令。9日現在で人的被害はなく、住宅の全半壊も出ていないが、浸水状況などはまだ把握できていないという。また、熱海市に通じる国道135号や湯河原パークウェイなどが土砂の流出や崩落で通行止めとなっている。県によると、町内で記録された連続雨量は600ミリを超えていた。

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