「定点」で学ぶ噴火災害 教訓伝える遺構巡る 島観連が初企画

定点の位置を示す三角すいの標柱の前で、満行さん(奥中央)から噴火災害についての説明を受ける参加者ら。後方は平成新山=島原市北上木場町

 43人の犠牲者が出た雲仙・普賢岳大火砕流から30年を機に、島原半島観光連盟(島観連)などが、当時の報道陣の撮影拠点「定点」周辺(長崎県島原市北上木場町)を巡るツアーをつくった。地元住民らの手で今春整備された災害遺構でのフィールドワークを通し、噴火災害の恐ろしさや教訓、消防団員らに犠牲が出た経緯を学ぶことができる。
 噴火災害を知らない世代が増える中、被災現場を訪れ、防災・減災の意識を高めてもらおうと、島観連、島原半島ジオパーク協議会、雲仙岳災害記念館が初めて企画。同記念館を約1時間見学した後、ガイドの案内で定点や報道関係の被災車両の災害遺構など4カ所程度を2時間半~3時間かけて巡る。
 7日のモニターツアーには島原、雲仙、南島原3市の観光関係者ら20人が参加した。定点では、島原半島ジオパーク認定ガイドで元高校教諭の満行豊人さん(84)=島原市小山町=が、消防団員ら教え子6人を火砕流で亡くした経緯を説明。報道陣が再三の避難要請に応じず取材を続けた上、在京放送局が留守宅で電源を無断使用していたため、消防団員らが警備も兼ねて危険な場所に戻って火砕流に巻き込まれたと述べ、「報道陣がここにいなければ亡くならずに済んだ。遺族の悔しさや悲しさ、真実を知ってほしい」と訴えた。
 南島原市の宿泊施設に勤務する金子弥生さん(40)=雲仙市小浜町=は「初めて定点に来て、噴火災害の恐ろしさを改めて学べた。観光で来たお客さんに説明できるように、この経験を生かしたい」と話した。
 一般向けツアーの初回は25日開催。以降、8月と9月はそれぞれ2回程度実施する予定。代金は大人4980円。問い合わせは島観連(電0957.62.0655)。

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