【高校野球】「先輩の分まで戦おうと」 明桜監督がベンチに持ち込んだOBプロ選手からの贈り物

ノースアジア大明桜・輿石重弘監督【写真:荒川祐史】

18年、19年と県決勝で涙、昨年は優勝するも甲子園大会が中止に

スタンドからブラスバンドの声援が鳴り響く。新型コロナウイルスの災禍はまだ収まる気配はないが、こまちスタジアムには高校野球の日常が徐々に戻ってきた。11日に行われた全国高校野球選手権秋田大会2回戦で、ノースアジア大明桜は能代に4-0で快勝。昨年、県の独自大会を制した強豪が4年ぶり甲子園出場に向け、幸先の良いスタートを切った。

「一戦決勝」

輿石重弘監督率いるノースアジア大明桜が掲げるスローガンだ。1戦1戦が決勝だと思い、気を抜かずに全力で戦うという意味が込められている。

監督就任1年目の2017年にチームは甲子園に出場し、夏季大会は昨年まで4年連続で県大会決勝に進出。しかし、18年は吉田輝星投手(日本ハム)を擁する金足農に零封負け、19年は秋田中央にサヨナラ負けと、2年連続で決勝で涙を流した。

3年ぶりの甲子園を目指した昨年は140キロを超える投手を4人揃え、守り勝つチームを築き上げた。しかし、新型コロナウイルスの影響で甲子園大会が中止に。県の独自大会を制したが、甲子園の土を踏むことはなかった。

ノースアジア大明桜・輿石重弘監督【写真:荒川祐史】

OBのロッテ山口は昨年3年生にTシャツをプレゼントした

悔しさを胸に1年間指導をしてきた。1学年上の先輩らに刺激を受けて育ったプロ注目右腕・風間球打投手(3年)はこの春、最速153キロを計測するまでに成長。課題だった打撃も冬に強化した。それまでは3か所だった打撃練習スペースを5か所に増設。低いライナーを逆方向に打つことを意識し、打力向上に取り組んできた。

迎えた初戦では、初回1死二、三塁で4番・真柴育夢内野手(3年)が左前に2点適時打を放つと、4回2死二、三塁でも9番・上山優和外野手(2年)が右前適時打を放ち、2点を追加した。安打数は6本と打線爆発とはいかなかったが、効率よく得点する選手たちを「1番から9番まで点数が取れる打線。過去の先輩方にも劣っていない」と評価する。

ベンチに持ちこんだTシャツがある。昨年、甲子園大会の中止が決まった時に現ロッテの山口航輝外野手が当時の3年生全員にプレゼントしたものだ。胸元に「MEIOH」と書かれた黒いTシャツには、左腕に山口の背番号である51番がプリントされている。山口は2年時の17年に甲子園出場、翌18年は決勝で敗れている。

「去年の先輩の分まで戦おうという気持ちで持ち込みました。県大会では相手を圧倒して甲子園に行きたいですね」。ノースアジア大明桜が「一戦決勝」で4年ぶりの甲子園を目指す。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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