悪夢の前半戦に本音ポロリ「大変過ぎて…」 西武辻監督が“雨”に見出した光明

西武・辻発彦監督【写真:荒川祐史】

33勝38敗14分で「借金5」…首位オリックスに6.5ゲーム差の5位

■西武 8ー3 ロッテ(14日・メットライフ)

西武は14日、本拠地メットライフドームで行われたロッテ戦に8-3で快勝。東京五輪開催に伴う約1か月の中断に入る前の最後の試合を飾った。就任5年目の辻発彦監督にとっては、これでもかというほど主力の戦線離脱が相次いだ、悪夢のような前半戦だった。

辻監督は試合後、実感を込めてこう語った。「きょう(の朝)ランニングしてたらさ、途中で凄い雨が降ってきた。じゃじゃ降り(土砂降り)で、頭から靴の中までびしょびしょになったよ。悪い部分が全部洗い流された気がします」。そうであってほしい──という悲痛な声に聞こえた。

開幕直後から、主砲の山川が左脚の故障で約1か月、二塁レギュラーの外崎は死球による左腓骨骨折で約3か月も戦列を離れた。主将の源田も5月下旬に新型コロナウイルスの陽性が判明。レギュラーの座を固めていたドラフト4位ルーキー若林が、5月30日の阪神戦の守備中に「左膝十字靭帯損傷」の大ケガを負い、今季中の復帰が絶望となったのも痛恨だった。若林がマークした今季20盗塁は、離脱から約1か月半が経過した14日時点でなお、両リーグを通じてトップに立っているほどだ。

「一言でいえば苦しかった。やり繰りが大変過ぎて、固定した打線が組めなかった。主力があれだけ抜けて、ましてや二遊間がいなくなったりだとか……」。現役時代に名二塁手として鳴らした辻監督にとって、昨季そろってゴールデングラブ賞を獲得した源田と外崎の離脱はとりわけ歯がゆかったようだ。「若い選手で行かざるをえなくなって、ファームの野手がいなくなるほど上に呼んだ」と振り返る。

呉念庭、愛斗、岸ら若手の台頭が収穫

33勝38敗14分で“借金5”を抱え、首位オリックスに6.5ゲーム差の5位。過去4年で優勝2回、2位1回、3位1回とAクラスから外れたことがない指揮官にとしては忸怩たる思いだろう。それでもチーム野手最年長コンビの中村&栗山の奮闘などで、なんとか挽回可能な位置に踏みとどまったとも言える。

収穫を挙げるとすれば、故障者続出で出場機会を増やした若手の中から、呉念庭内野手、愛斗外野手、岸潤一郎外野手らが台頭したこと。特に呉は、当初は山川の代役として一塁、その後二塁、最近は主に三塁を守り、打率.272、7本塁打、チーム最多の42打点の打棒を振るっている。監督推薦で初の球宴出場も決まった。この日も3回に試合の流れを引き寄せる7号3ラン。辻監督は「ここまでチームを支えてくれた功労者だと思っている。非常に成長した」と手放しで称賛する。

腰痛などで離脱中の木村も、2軍で実戦を重ねている。本来のレギュラーの顔ぶれが整いつつある。ペナントレース中断期間に行われるエキシビションマッチでは、「まだ細かいことができない若い選手たちを試す期間だと思っている。一方、レギュラーを張ってる選手は(体調を)ベストの状態にすることが一番」と辻監督は言う。昨季までのレギュラーと伸びてきた若手が融合し、後半戦の反転攻勢につなげることができれば、悪夢の故障者続出も文字通り“ケガの功名”だったと振り返ることができるはずだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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