体験記完成の被爆者2人 「語り継ぐ交流会」であの日の実相証言

交流会で被爆体験を語った(左から)大原さんと岡さん=国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

 聞き書きによる被爆体験記の作成に取り組んでいる国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館は14日、新たに体験記が完成した被爆者の大原賢子さん(87)と岡信子さん(92)を招いた「語り継ぐ交流会」を長崎市平野町の同館で開いた。2人は被爆の実相を証言し、後世に伝える重要性を語った。
 継承につなげようと初めて企画。朗読ボランティアや家族・交流証言者ら約30人が参加した。
 大原さんは華僑として長崎で生まれ、11歳の時に館内町で被爆。戦後帰化したが、戦時中は外国人という理由で防空壕(ごう)に「入るな」と言われ、被爆者としても差別を受けたと証言した。
 岡さんは現在の住吉町の自宅で被爆。負傷しながらも看護学生として救護に当たり、行方不明だった父を捜し回った。遺体や負傷者が運ばれてくる救護所での壮絶な体験を振り返った。岡さんは今年8月9日の平和祈念式典で、被爆者代表として「平和への誓い」を読み上げる。
 岡さんは「個々の被爆体験や証言は小さな破片に過ぎないが、積み重ねることで全体像に近づける。生き残った者の務めとして語っていきたい」、大原さんは取材に「体験を後世に伝えていく必要があり、戦争だけはしてはいけないと思う」とそれぞれ語った。
 聞き書きの体験記は作成中も含め、現在92人分が集まっている。

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