【藤井勘一郎コラム】「父の無念を晴らしたい」 角居助手を競馬の世界に駆り立てた“転機”

角居助手(右)が担当するダノンピーカブーとのスリーショット

皆さんこんにちは、藤井勘一郎です。

今日は、最近親しくさせていただいているホースマンのお話をしたいと思います。

その人は大久保厩舎の角居和仁調教助手。今年2月で勇退された角居勝彦元調教師の息子さんです。

彼との出会いはトレセン内でお互いに騎乗して坂路調教に向かう最中に、あいさつをしてもらったのが最初です。馬上から自己紹介をしてくれたのですが、実は彼も若くして海外に出て様々なチャレンジをしてきた人で、ちょうどオーストラリアのメルボルンに滞在していた際に、私のメルボルン時代の恩人である高橋仁厩務員にお世話になっていたそうなんです。

高橋仁さんは向こうで表彰を受けるくらい優秀な厩務員さんで、ロイヤルアスコットに帯同した経験もあるくらい。そこで和仁君が使っていた部屋は、私が以前に居候をしていた部屋らしく、そのご縁もあって意気投合し、今に至ります。

当然幼少期から競馬に近い環境にいた和仁君。シーザリオのアメリカンオークス(2005年)、ヴィクトワールピサのドバイWC(2011年)など歴史的な場面にも居合わせたそうですが、彼自身は馬よりもサッカーに熱中して、中学校ではキャプテンも務めるほど。高校入学後は一念発起して英国に渡りますが、そこでも語学の勉強とサッカーが中心の生活で競馬の世界に身を置くことは考えていなかったようです。

転機になったのが、14年のドバイシーマCでお父さんの管理馬であるデニムアンドルビーが10着に敗れたのを現地で目の当たりにした時。その時に感じた悔しさ、父の無念を晴らしたいという感情が、彼を競馬の世界に駆り立てたのですね。そこからはグランド牧場でお産と馬乗りを経験して、英国、フランス、そして前述のオーストラリアに渡り競馬の勉強。いずれお父さんのような偉大な調教師になるべく計画的にキャリアを積み重ねています。

彼と話していて感じるのは常に自分が調教師だったらどうするか、という目線で馬と真摯に向き合っている点。だからこそ、話していても楽しいし、とても勉強になります。今春にはこれまでの海外経験を買われてチュウワウィザードのサウジ・ドバイ遠征にも同行したそうです。

今週の日曜小倉2R(2歳未勝利=芝1800メートル)には彼が担当するダノンピーカブーが出走予定です。いつか彼とのコンビで大きいレースを勝つこと事ができれば最高ですね。

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