「不安解消してワクチン接種を」 専門家も慎重対応求める

ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で取材に応じる森内教授

 長崎県内自治体で対応が分かれている子どもの新型コロナウイルスワクチン接種について、文部科学省は学校集団接種を推奨せず、ワクチンや小児医療の専門家も慎重な対応を求める。
 日本ワクチン学会と日本小児科学会の理事を務める長崎大学病院の森内浩幸教授は「不安や疑問を解消せずに接種すると(明確な原因がないのに体の不調を訴える)不定愁訴(しゅうそ)など、ワクチン成分に関係のないトラブルも起こりうる」と指摘する。
 文科省が集団接種を推奨しないのは、同調圧力に対する懸念や接種後の体調不良への対応が難しいからだ。西海市教委の担当者も「怖くて受けたくないのに接種してしまったり、『お前受けていないのか』とからかわれたりしかねない」と、心理的負担やいじめの要因となる事態を警戒する。
 日本小児科学会予防接種・感染対策委員会は「接種前、中、後にきめ細やかな対応が必要」との考え方を示している。森内教授はこうした対応を可能にするためにも特に12~15歳は「かかりつけ医による個別接種が望ましい」とする。ただ、県内には難しい地域もあり、「接種医を地域の人にお願いし、気軽に相談できる体制を整えてほしい」と注文する。
 離島ならではの事情もある。部活や就職活動、受験などで島外との往来が多く、対馬市は高校生全般、五島市も高校3年生の接種を夏休み中に行う予定。

 ワクチンの流通が滞る中、基礎疾患があるにもかかわらずいまだ接種できていない40、50代も少なくない。森内教授は「健康な子どもは重症化する可能性が低い」として、接種順位を入れ替える自治体に対し疑問を投げ掛ける。ただ、離島の事情も踏まえ、こう付け加えた。「子どもの将来のために優先的に接種していいというコンセンサスが得られるのであればいい」
 小児科学会の同委員会は「子どもを感染から守るには周囲の成人への接種が必要」との考え方も示している。森内教授は「重症化リスクが高い子どもと接している特別支援学校や重症心身障害児の施設職員が特に優先されるべき」と強調。さらに、子どもでも「医療的ケア児や重症心身障害児は重症化しやすい」として接種の必要性に言及する。


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