全セ・原監督「30年ぶり送りバント」のガチ采配に込めた〝打倒パ〟の本気度

オールスター2戦目で初のリクエストを要求した全セ・原監督

2年ぶりに開催されたオールスターゲームは全セ、全パともに1勝を挙げて閉幕した。今回の球宴のハイライトは、全セを率いた巨人・原辰徳監督(62)が祭典に持ち込んだ「勝負論」。単なるお祭りだけでは終わらせず、勝ちにこだわる姿勢で球宴に新たな化学反応をもたらした。その〝ガチ采配〟に込められた思惑とは――。

夢の時間はアッという間だ。球界のスターたちが集結した2試合は両軍とも見せ場を作り、1勝1敗。その中でも特徴的だったのは、原監督が仕掛けた勝負を意識させるスタイルだった。

第1戦の試合前には全セのナインに「根底にあるのは、忘れてはいけないことは勝利を目的とすること」と大号令。これに応え、勝負どころで打席を迎えた中村(ヤクルト)は、自らの判断で球宴では30年ぶりとなる送りバントを決めた。対する全パ率いるソフトバンクの工藤監督も申告敬遠で〝応戦〟。シーズンさながらのつばぜり合いに、祭典はかつてない緊張感に包まれた。

第2戦でも原監督は球宴史上初のリクエストを要求。さらに、大島(中日)はノーサインで決死のホームスチールを敢行した。結果的に不発に終わり、指揮官は「ケガしなくて良かった」と胸をなで下ろしたが、すべては戦前に発した一大方針に起因している。それにしても、なぜ原監督はこのタイミングで異例のエキスを注入したのか。

球界関係者は「原監督の任期が、今年までということも大きいのでは。『パ高セ低』の構図もなかなか変えられず、セ球団に持ちかけたDH制の話も進まない。『本当にパ・リーグに勝つ気があるのか!?』という〝喝〟でもあるんじゃないか」と読み解いた。

日本一には4年連続でソフトバンクが輝き、セ球団が日本シリーズを制したのは2012年の巨人(原監督)が最後。長年続くパの常勝現象の一因を原監督はDH制の有無と指摘し、球団を通じて理事会などでも働きかけたものの、議論に大きな進展は見られなかった。巨人が日本シリーズで2年連続の4連敗を喫したことも事実だが、指揮官の最大のもどかしさは、その巨人に勝てなかったセ球団の危機感のなさや、リーグ全体で「打倒・パ」の課題に取り組む姿勢が感じられなかったことにある。

3年契約の原監督はひとまず今季で指揮官としての任期を満了する。祭典で指揮を執るのも今回が最後となる可能性がある。だからこそ、全パに対して戦いを挑む姿勢を全セのナインに植えつけたのではないか…というわけだ。

球宴前には工藤監督に不意打ちでスタメンをサプライズ発表するなど、あの手この手でひと泡吹かせようと奔走した原監督。衰え知らずの闘争心は、今後のセ・リーグにどんな影響を及ぼすのか。

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