【侍ジャパン】〝バブル方式〟に戸惑いと悲鳴「まるで独房生活」「ストレスとの闘いになる」

侍メンバーはストレスとの闘いに突入した

金メダル奪取へ思わぬ〝ハードル〟となるかもしれない。東京五輪に臨む野球日本代表・侍ジャパンの強化合宿が19日から仙台市内でスタートした。代表24人が集結し、福島県営あづま球場で28日に行われる開幕戦(ドミニカ共和国)に向けて最終調整に入った。しかし、舞台裏では新型コロナウイルス感染防止のため外部との接触を完全に遮断する「バブル方式」の導入に戸惑う選手が続出。約20項目の禁止事項を目の当たりにし、チーム内からは早くも悲鳴が上がっている。

合宿初日の練習はドミニカ共和国との初戦が12時プレーボールとなることも想定し、午後1時半から開始。強烈な日差しが照りつける炎天下の中、侍戦士たちはキャッチボールや打撃練習などのメニューをこなし、大粒の汗を流しながら約3時間にわたって調整に励んだ。また室内練習場では非公開でサインプレーの確認も行われた。

練習前の全体ミーティングでは稲葉篤紀監督(48)が顔をそろえた選手らに「オリンピックでプロ(が出場するよう)になってから、金メダルが取れていない。それだけ難しい大会だということ。そう簡単には金メダルは取れない。ここにいるみんなが結束して、一つになって戦っていきたい」と呼び掛けた。練習を終えると指揮官はあらためて取材に応じ「チームとしては一日一日をしっかり作り上げていくというところでやっていきたい。いろんな確認と調整をしながら本番に臨みたい」とコメント。言葉の節々からは確かな手応えをつかんでいる様子がうかがえた。

だが、その一方で当の侍戦士たちはコロナ禍で開催される世界最大のスポーツイベントの〝現実〟に直面し、当惑しているようだ。東京五輪に参加する侍ジャパンの面々も合宿集合日の18日から、いわゆる「バブル方式」の中に入った。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会から指示された感染対策を順守しなければならず、基本的に外部との接触は遮断される。

「このバブル方式で禁止されている項目が思いのほか厳しい。全部で20項目ぐらいある」と侍ジャパンの関係者は明かし、こうも続けた。

「外出禁止だから、近くのコンビニへ買い物に行くのもご法度。宿舎内のロビーでチーム関係者以外の人間と会うことがNGとなっているのは当たり前だが、実は身内の選手同士でも『なるべく大声で会話しないように』とされている。それを象徴するように宿舎の部屋では一応飲酒がOKとなっているが、他の選手を呼んで一緒に飲むことは禁じられている。要は〝一人飲み〟のみ容認されているというのが実情」

さらに食堂にも感染防止のため個々の席ごとにアクリル板が立てられ、お互いの会話がほとんどできないように徹底されているという。選手間からは「五輪が終わるまで、まるで独房の中で生活しているような感じになるのではないか」との声もチラホラ聞こえてきている。

世の中がコロナとの闘いにさいなまれていることから、東京五輪に参加する代表選手たちの誰もが「バブル方式」の枠組みに入らなければならないのは当然の義務だ。とはいえ「プロ野球のレギュラーシーズンを戦ってきた中で認められていたことが、五輪ではほとんどできなくなる。これはある程度事前に分かっていたとはいえ、いざ直面してみると結構厳しい。選手たちはそのギャップの差にも悩まされ、確実にストレスとの闘いになると思う。東京五輪を目指してきたアマチュアの選手たちはそこまで戸惑うことはないかもしれないが、やはりプロ選手で構成される侍ジャパンにとって『バブル方式』はかなりの悩みの種になるだろう」と前出の関係者は説明する。

東京五輪期間中、28日の初戦以降から大会終了まで侍ジャパンはJOC(日本オリンピック委員会)の管轄下に入るため「『バブル方式』のルールは、より厳格化されることになる」(前出関係者)という。侍ジャパンは強豪国との対戦だけでなく、コロナ感染を防ぐことに加え〝ストレスの壁〟も打ち破らなければならなくなりそうだ。

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