巨人・山口コーチがG育成出身初の一軍入閣 「世代交代」とは別に期待される “鉄腕” の役割

原監督の期待は大きい巨人・山口コーチ

若き指導者が大役を担う。巨人は新たなコーチ人事を19日に発表し、山口鉄也二軍投手コーチ(37)が一軍に配置転換となった。現役時代にはプロ野球記録となる9年連続60試合登板を果たした〝鉄腕リリーバー〟の一軍入閣。かねて原辰徳監督(62)が重きを置く「次世代のリーダー育成」を加速させたいという狙いがあるが、今回のメス入れにはもう一つの思惑も見え隠れする。その内容とは――。

新たに発表されたコーチ人事では、5人が異動。5月下旬に配置転換となっていたバッテリー部門は、相川亮二コーチ(45)が一軍、実松一成コーチ(40)は二軍、加藤健コーチ(40)は三軍のバッテリーコーチへと、開幕時の布陣に戻ったが、最大の注目は杉内俊哉一軍投手コーチ(40)に代わって一軍に〝昇格〟した山口コーチだ。

山口コーチは現役時代の2005年、大リーグ・ダイヤモンドバックス傘下から巨人の入団テストを経て、育成ドラフト1位で入団。育成出身選手の一軍入閣は球団史上初で、新たな歴史の1ページを刻む人事となった。

一軍に新たな風を入れた原監督だが、2つの思惑がありそうだ。その1つは3度目の監督就任以降、注力してきた「新時代のリーダー」の育成。指揮官は今回の人事についても「(現コーチ陣の中心は)若い人たちだから経験をね。もちろんファームでも三軍でも経験はできるけど、やっぱり一軍で〝実弾〟が飛び交っているところというのはね。それぞれが経験してもらうことでお互いの刺激にもなるし。こっちも勉強になる」と説明。それぞれの新たなフィールドでの経験を、今後の指導者人生のための「肥やし」としてほしい考えだ。

さらに「今度は彼らの世代。われわれは、まだ言われないかもしれないけど『老害』みたいな感じで言われる世代」と語り「その中で時間をね、有効に使うということは重要なことだと思いますね」と、世代交代に向けた思いも明かした。

そして山口コーチ一軍昇格のもう一つの狙いは、V3を狙う現在のチームにとって重要な“カンフル剤”としての役割だ。今季の巨人投手陣は、エース・菅野をはじめとした主力の度重なる離脱によりコマ不足が顕著。ここまで開幕ローテを守りきった投手は高橋ただ一人と、先発陣の不調が相次ぎ、苦肉の策としてブルペンを総動員する「マシンガン継投」も連発していた。

一方で、桜井や戸根、シーズン途中から中継ぎに転向した畠など、継続的な結果を残せず、いまいち伸び悩む若手救援陣の姿も目立った。宮本投手チーフコーチも「持ってる球は良いんだけど…」と評するだけに、首脳陣にとっては歯がゆい現実となっている。

そんなリリーフ陣の能力開花に期待されるのが、山口コーチの手腕だ。前出の選手らに対しては、一部から「メンタル面での課題」を指摘する声も上がっている。宮本コーチは「メンタルって結局はプロに入ったら〝力〟に入ってくるわけですよ。だから『メンタルが弱いからこいつは力を発揮できてない』とかいうけど、それは単に力がないんですよ」ときっぱり否定。さらに宮本コーチによると、現役時代の山口コーチは「『嫌だな嫌だな』て言ってマウンドに行っていた」という。それでも抑えられたのはなぜなのか。

「結局、力があるから抑えられちゃうわけですよ。力っていうのは球の力だけじゃなくてコントロールとか、精神面、メンタル面の調整をできるのが、総合的な全部の力だと思うから」。

精神的な不安を抱えながらも、長きにわたってブルペンの柱としての活躍した支えた山口コーチ。その〝鉄腕魂〟の伝授が期待されている。

心のもろさを知る指導者だからこそ、成長に苦しむホープたちのサポートができる。現在と未来に向けて、山口コーチがどんな手腕を見せるか、注目だ。

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