コロナ禍に狙われる地方 特殊詐欺、非接触型の手口増加 家族で注意喚起を

 長崎県内で特殊詐欺被害が相次いでいる。今月、諫早市内の80代女性が示談金名目で1億円超とみられる被害に遭ったと判明した。県内の今年上半期の状況について、県警の特殊詐欺対策を総括する平井隆史首席参事官に手口の特徴や背景を聞いた。
 県警組織犯罪対策課によると今年上半期(1~6月)の認知件数(暫定値)は35件(前年同期比20件増)、被害総額は約5024万円(同約2189万円減)。件数が多いものから▽「架空請求」14件(同5件増)、計約1665万円(同約336万円減)▽「還付金詐欺」12件(同12件増)、計約964万円(同約964万円増)▽「融資保証金詐欺」4件(同3件増)、計約1924万円(同約1905万円増)。
 警察庁の特殊詐欺対策室で予防対策に携わった平井首席参事官は、被害が増えている背景に二つの理由が考えられると指摘する。
 一つは新型コロナウイルスの影響。今年、県内で多く確認されている還付金詐欺は、被害者を現金自動預払機(ATM)に誘導して犯人が現地に出向く必要がない非接触型の手口。コロナ禍で移動が制限される中、大都市に多いという犯行グループにとって、地方は離れているため「ローリスク」で狙われやすいという。
 もう一つは手口の周期。犯行グループが一斉に摘発され、同種手口の被害がいったん落ち着いても、同時期に刑務所から出所することで「復活してまた活発になる」。還付金詐欺については「3、4年周期で増える傾向があり、だいたい今がその時期」という。
 同課によると、還付金詐欺は金融機関関係者の目に触れないよう、窓口が閉まる午後3時以降にATMに誘導する手口が増えている。平井首席参事官は「家族が集まる機会が増える夏休みに、家族同士で注意喚起をするなど『見守りの目』をみんなに持ってほしい」と呼び掛ける。

© 株式会社長崎新聞社