【高校野球】球速5キロ増に“大人の投球” 京都国際の来秋ドラフト候補左腕に見えた成長

力投した京都国際のエース・森下瑠大【写真:市川いずみ】

準々決勝で京都国際の2年生エース・森下瑠大が奪三振ショー

京都国際の2年生エース・森下瑠大投手の奪三振ショーだった。全国高校野球選手権の京都大会は24日、準々決勝2試合が行われ、第1試合で今春の選抜大会出場校・京都国際が4-0で塔南に快勝。準決勝に駒を進めた。森下は被安打3、13奪三振の完封劇。春からの成長を感じさせる投球内容だった。

「最初から飛ばして、守備から流れを作ることを意識して入りました」。言葉通り、プレーボール直後にヒットを許すも、後続を2者連続三振で抑えるなど、流れを作らせない立ち上がり。4回に四球でランナーを許すも、焦る様子は一切ない。このイニングも2者連続三振を奪い、エースらしいマウンドさばきでスコアボードに「0」を刻んでいく。

今春の選抜2回戦では東海大菅生(西東京)にサヨナラ負け。そこから、明らかな成長が見えた試合だった。左腕から投じられる直球の威力は、スタンドから見ていても圧倒的に違っていたのだ。

森下は「甲子園に出たときは138キロで、今は143キロになりました」。頭の中はいつも「どうやったら、いい球が投げられるのか」ということでいっぱいだという。YouTubeで“いい投手”の動画をたくさん見ることで「下半身から上半身への連動」が大切だとこの冬に気づいた。

下半身の使い方から、腕の出し方まで、納得いく形になるまで投球フォームを確認した。力強さが増した直球が森下の魅力であるスライダーをより活かしていた。中学生の時から参考にしているという松井裕樹投手(楽天)と同じ握り方。試合後「今日はスライダーがよかった」と振り返るように、少し沈むボールに塔南打線のバットは何度も空を切った。

京都国際・小牧監督は投球が「大人になった」

一方、京都国際打線も塔南のエース・粟津啓太投手(3年)の前に7回まで、わずかヒット3本。四球を活かし、なんとか4点を奪っていたが流れをつかみきれないままだった。

しかし、小牧憲継監督が「大人になった。責任感が非常にある」と信頼するように、森下は8回にエースの投球を見せる。7回までに12個の三振を奪っていた投球から一転、投球数が100球に差し掛かろうとした8回、「打たせるように投げた」と、遊ゴロ、二ゴロ、投ゴロとわずか10球で3アウトを取り、勝利をぐっと引き寄せた。

来秋のドラフト候補となると予想される左腕は「やりたいようにできた」。それでも甲子園出場はあくまで通過点という背番号1は「目標は全国制覇なので今日の内容は70点です」とはにかんだ。春に続き夏も新たな歴史を刻むために。初めての夏の甲子園まであと2勝だ。(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。

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