3つの世界遺産がある鹿児島 奄美・屋久島・明治日本の産業革命遺産 観光業界、周遊活発化に期待高まる

奄美・沖縄の世界遺産登録を祝う横断幕を準備する鹿児島市の施設=26日、鹿児島市南栄1丁目の奄美の里サウスヴィラガーデン

 「奄美・沖縄」の世界自然遺産決定は、新型コロナウイルス禍が長期化する鹿児島県観光にとって明るい材料だ。屋久島を含む自然遺産二つと、文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の三つの世界遺産を有する県は全国唯一。関係者は26日、地元の自然や文化の価値を再認識するとともに、県本土や離島間の周遊の活発化に期待した。

 「大きなダメージを受けている事業者にとって希望の光」。奄美大島観光協会の越間得晴会長(53)は喜びをかみしめる。大河ドラマブームや格安航空会社(LCC)就航で順調に伸びていた奄美観光だが、コロナ禍で一変。延び延びとなった登録を待ちわびていた。

 5月の登録勧告以降、各地の旅行会社からの問い合わせや企画の動きが活発化。「自然と共にある暮らしや文化、人々の温かみも、観光の素材として打ち出していきたい」とコロナ後を見据える。

 大島紬の製造工程が見学できる鹿児島市の「奄美の里」は、27日から来月8日まで庭園を無料開放する。レストランでは奄美の食材を生かした特別メニューも企画。運営するアーダンリゾートの藤陽一社長(47)は「奄美の魅力を伝える懸け橋となっていきたい」と力を込めた。

 奄美・沖縄航路のマリックスライン(鹿児島市)は、11月に新造船が就航予定。世界遺産登録と併せてお祝いムードを盛り上げようと、キャンペーンやグッズ製作を計画する。旅客営業部の上塩入誠部長(49)は「島民の生活航路だが、今後は観光利用の増加が収益確保の鍵。世界遺産登録で人の動きが活発になれば」と願った。

 屋久島観光協会の後藤慎会長(47)は、三つの世界遺産と指宿や霧島地区、他の離島などとの連携を提案。「1週間余りかけて県内を巡る周遊型プランも考えられる。県全体として魅力を発信することが大切」と指摘した。

ハブみこしで登録を祝う奄美大島5市町村の関係者ら=26日、奄美市役所
自然遺産登録決定の瞬間、「ワイド、ワイド」の掛け声で手踊りする徳之島の住民=26日、天城町防災センター

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