〈なおえつうみまちアート〉作家紹介〈4〉 直江津屋台会館および街中各所 図版切り抜き海原を 「名称の海園(めいしょうのみその)」「小さな屋台/移動案内車」(渡辺英司さん)

 直江津の大切な祭り、祇園祭を支える屋台会館を会場に、植物/魚図鑑などから図版のみを切り抜き針金を使って自立させ、大きなホール全体に約1万5000個を設置。さらに地域で漁をする際に使われてきた伝統的な木造船「どぶね」とともに展示し、広々とした空間全体に静謐な海原を出現させるのは、渡辺英司さん。制作サポートのボランティアと一緒に図版を会場に並べたり、ワークショップで子供たちが切り抜いた図版を作品として展示したりします。

名称の庭/御園」2010 撮影©渡辺英司

 今回はこの他に、市販のリヤカーを改造した「小さな屋台/移動案内車」という作品も発表します。会期中、この屋台を街の希望者の方にお貸し出しして、街中を巡っていただくこと自体が作品になります。事前のワークショップでは、子供たちが自分たちで屋台を組み立て、色やデザインを考えて完成させて商店街の皆さまへ贈呈式をするなど、とても親しみやすい作品になっています。

 アートは「観るもの」から、「参加するもの」へ。うみまちアートは、気軽に参加できるアートプロジェクトです。会期中に屋台を活用してみたい、という方は、ぜひ公式サイトをご覧ください。(文・キュレーター、鈴木潤子さん)

 1961年生まれ。85年愛知県立芸術大彫刻科卒業。名古屋市在。2004―2005年文化庁芸術家在外派遣研修員としてスコットランドに滞在(エジンバラ芸術大客員研究員)。主な展覧会:2001年「出会い」展 東京オペラシティアートギャラリー(東京)、07年「笑い展:現代アートにみる『おかしみ』の事情」森美術館(東京)、10年「第1回あいちトリエンナーレ」(名古屋)、17年「Art ZuidZ2017」アートチャペル(アムステルダム、オランダ)など。

屋台会館に作品を、街中に小さな屋台を出展する渡辺さん 写真©Yasuko Otsuka

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