一発攻勢か、スモール・ベースボールか 侍・稲葉監督が金メダルを獲るための戦法

侍ジャパン・稲葉篤紀監督【写真:荒川祐史】

登録選手数減で「プレミアの時のような野球はできない」

東京五輪の野球日本代表「侍ジャパン」は、28日に1次リーグ初戦のドミニカ共和国戦(福島あづま球場)に臨む。稲葉篤紀監督が目指す野球は、豪快な一発攻勢か、それともスモール・ベースボールか。

稲葉監督はドミニカ戦を2日後に控えた26日、ソフトボールの日本代表が1次リーグ5試合で6本塁打を量産して勢いに乗り、決勝進出を決めたことを引き合いに、「ソフトボールでもホームランが決勝点になったりしている。やはり国際大会は、機動力野球だけではなかなか勝っていけない。スピードとパワー、ホームランが大事になる。そういう意味で(野球に)通じる部分があると思いながら見ています」と語った。

しかし、25日まで宮城・仙台市で行われてた強化合宿中、稲葉監督は「(五輪は)情報戦ですから」と何度か口にしているだけに本番での戦い方は気になるところだ。

というのも稲葉監督は、24日の楽天との強化試合(楽天生命パーク宮城)で9番を打たせた菊池涼介内野手(広島)を、翌25日の巨人との強化試合(同)で7番に上げた。そして6回、5番・浅村栄斗内野手、6番・柳田悠岐外野手が連続適時打を放った直後、1死一、三塁で菊池にセーフティスクイズを指示。これがハマり、この回一挙3点を奪ったのだった。

「(セーフティスクイズは)サインです。打つだけで点数をたくさん取ることは、なかなかできない。細かい野球をやるという(首脳陣の)姿勢を(代表選手たちに)見せたかったし、そういうシチュエーションになった。バント、小技ができる菊池選手を7番に入れたらどうなるかを見てみたかった」と稲葉監督は納得の表情を見せた。

「プレミアのように選手をどんどん代える野球はできないと改めて感じた」

同じく巨人との強化試合で、2番スタメンを務めた源田壮亮内野手(西武)には1回と7回に2度送りバントをさせ、「何点あってもセーフティリードではないと思っている。(点を)取れる時に取っていこうということでバントをしてもらった」とうなずいた。

「1発攻勢」を匂わせながら、本番では小技と機動力を多用し、相手を翻弄する可能もある。国際大会ではそれくらいの駆け引きは日常茶飯事。代表選手として2008年北京五輪に出場し、メダルなしに終わった屈辱を忘れていない稲葉監督は重々承知している。

稲葉監督は2019年の「WBSC プレミア12」では、周東佑京内野手(ソフトバンク)をここぞの場面での代走、左腕・嘉弥真新也投手を左打者用のワンポイントで効果的に起用し、侍ジャパンを世界一に導いた。ところが、プレミア12では28人だった登録選手数が、東京五輪では4人減の24人となるため「少ない人数でやらなければならない。プレミアのように選手をどんどん代える野球はできないと改めて感じた」とも語る。

得意の戦法を封じられた格好の稲葉監督は、どんな作戦で悲願の金メダルを引き寄せようとするのだろうか。28日の初戦を見れば、少なくともある程度の傾向は見えてくるはずだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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