【侍ジャパン】楽天・田中将&巨人・坂本ら4人が命綱! 〝稲葉マネジメント〟お手本は2006年WBC王監督

【赤坂英一 赤ペン!! 】稲葉ジャパンは「責任分散型」のチームである。通常なら主将、エース、守護神と、要を担う選手が決められていない。

稲葉監督は一昨年の国際大会「プレミア12」で主将を置かずに初優勝。今回の東京五輪も「投手陣、野手陣を引っ張ってほしい選手の名前(菅野、田中将、坂本、菊池涼)は挙げているので、彼らを中心にやってほしい」とコメントしている。

しかし、投手陣では稲葉監督がエースに指名した菅野が不調で辞退。田中将も楽天復帰1年目の今季は4勝5敗とふるわず。千賀も壮行試合・楽天戦で負け投手となるなど、事実上、エースも不在という状態である。

こうなると、野手陣のリーダー・坂本、菊池涼に課される使命は重い。彼らはどのようにチームを引っ張っていくつもりなのか。そこで思い出されるのが、2006年第1回WBCで日本代表を率いた王監督(現ソフトバンク会長)のチーム・マネジメントである。

当時、王監督が招へいを望んだ松井、井口、城島らメジャー組がそろって辞退した。残るイチロー中心のチームにせざるを得なくなったが、日本の選手たちにすれば“雲の上の人”。円滑にコミュニケーションを取るのが難しい中で、自ら両者の調整役を果たしたのが、04年アテネ五輪で長嶋ジャパン(脳梗塞のため中畑監督に交代)の主将を務めた宮本だった。

06年の王ジャパンには、04年のアテネで宮本とともに戦った選手たちもいた。彼らが宮本に意見や提案を打ち明けると、それを宮本がイチローに持ちかけてはあれこれと相談。取りあえず2人の間で出た結論を、ミーティングでイチローの口から選手に話してもらうこともあったという。

週刊誌のインタビューでこの経緯を聞いた時「難しかったですね」と宮本は話していた。が、そうした彼の“見えないチームプレー”、それを認めた王監督のおかげで、06年のジャパンはWBCで優勝できたのだ。

もちろん、当時まだ第1回だったWBCと、57年ぶりに東京で行われるオリンピックでは規模も意義も違う。が、どちらも同じ一発勝負の国際大会。稲葉ジャパンが王ジャパンに学ぶところは多いはず、と信じる。

まして、坂本と田中将は小学生時代、エースと4番・捕手としてバッテリーを組んでいた間柄。田中将のメジャー在籍中も、オフには必ず2人で会って食事をしていたと聞いている。ぜひ力を合わせて東京で金メダルをつかみ取ってほしい。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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