米軍提供施設返還問題 佐世保重工業(SSK)と市、議会 今後の方針調整

新返還6項目のうちSSKが関係する立神港区=2019年11月

 長崎県佐世保市や市議会が米海軍への提供施設などの返還を求めている「新返還6項目」。このうち佐世保重工業(SSK)に関係する2項目について、市と市議会基地対策特別委員会は同社と今後の方針について調整を続けている。背景には経営環境の変化などがあり、同社の意向の変化によっては基地政策の転換が必要になってくる。
 佐世保市は、米海軍佐世保基地の縮小の流れを受け1971年、経済浮揚を目的に佐世保港長期総合計画を策定。同計画を根拠に「返還6項目」をまとめた。その後、基地は拡大の方向に転じたため、98年、実現可能性の高い「新返還6項目」に内容を修正した。
 「新返還6項目」は現時点で「赤崎貯油所の一部(県道俵ケ浦日野線の改良にかかる地域)」と「同貯油所の一部(SSKの一時使用地区)」の2項目の返還が実現。残る4項目のうち「立神港区1~5号岸壁」(3号の一部、4および5号の一部は返還済み)と「旧米海軍専用鉄道側線返還(旧ジョスコー線)」にSSKが関係している。返還された場合は、同社が土地を買い取る想定だ。
 同社はこれまで「立神港区」については新造船や艦船修理、艤装(ぎそう)で使用する可能性、「旧ジョスコー線」は、SSK構内を分断する形でケーブルなどが地下に埋設され生産活動に支障がある-といった理由を挙げてきた。
 そうした中で浮上したのがSSKの事業再構築。同社は今年2月、船価低迷や新型コロナウイルス禍による業績悪化により、来年1月で主力の新造船事業を休止することを表明した。一方、市議会も今年3月に「返還6項目」の根拠となっている佐世保港長期総合計画の改訂を市に提言。策定当時と比べ状況や将来展望に乖離(かいり)が生じているためだ。こうした経緯から市は5月末、2項目について同社に「意向に変化がないか」の確認を求めた。
 2項目をめぐっては同社が名村造船所(大阪市)の子会社となったことを受け、2015年にも同様の意向確認をしている。その際に同社は、意向は変わらないことを表明している。
 今回の意向確認について同社は、協議中としており、まだ市側に返答をしていない。市基地政策局は「SSKが従来と異なる方針を示した場合、議会を含め市として検討が必要になる」としていて、同社の対応を注視している。

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