【侍ジャパン】「痛いかゆい」を口にしない令和の侍・柳田が〝激勝スイッチ〟押す貫録の2安打

サヨナラ勝利を喜ぶ柳田(左)と村上

東京五輪で悲願の金メダルを目指す野球日本代表・侍ジャパンは28日、オープニングラウンド初戦のドミニカ共和国戦(福島)に劇的な逆転サヨナラ勝ち。世界ランキング1位の日本が、9回2点差をひっくり返す見事な勝負根性を発揮して白星発進を決めた。

追い詰められた9回、激勝スイッチを押したのは〝滑り込み〟でスタメンに戻ってきたミスターフルスイング・柳田悠岐外野手(32=ソフトバンク)だった。「マイナビオールスターゲーム2021」第2戦(楽天生命パーク)が行われた今月17日に右脇腹に違和感を覚えた。19日からの強化合宿中は、代表首脳陣の判断でこの日の本番初戦に照準を合わせて慎重に回復に努めてきた。

最終回、一死から一塁への内野安打で出塁。「たまたまヒットになって、それがつながってくれた。後ろのバッターのおかげです」。その前の打席でも左翼フェンス直撃の二塁打を放っていた鷹の主砲は、貫録のマルチ安打でチームの反撃ムードを醸成した。その後、打線がつながり、最後はともにチーム最年長で同学年の坂本(巨人)の一打でサヨナラ決着。日本が得点を奪った7回と9回は、いずれも柳田のバットが攻撃に勢いをつけたものだった。

キャリアにおいて故障歴が多いことをやゆされることも多いが、体のケアやメンテンナンス、食生活に気を配り続けてきた。身長188センチ、体重91キロと代表の中でもひと際目立つ。そのサイズで、超人的パワーとスピードを生み出す反動による肉体的負担は想像以上に大きい。主力に定着した2014年以降、常勝軍団ホークスで他球団の選手よりも長いシーズンを戦い抜き、疲労困ぱいの中、毎年11月まで目いっぱい野球をやってきた。公になっていないだけで、柳田だからこそ乗り越えられてきた試練は多い。

かねて人知れず手負いの状態で口にしてきたのは「僕は『侍』だと思っている。侍というのは『痛いかゆい』を絶対に言わない。球場に行くと決めた時点で『侍』。できなかったら球場にはいないですから。球場にいるということは『やる』ということです」と、武士の精神でグラウンドに立ち続けてきた。天真らんまんのイメージが強いが、賢く、責任感はめっぽう強い。手負いの状態での判断は誰しも難しい。我を通すのではなく、あくまでチームの戦力となれるからこそユニホームに袖を通し、いつだって結果で証明してきた。

劇的な逆転勝ちに「チームが本当に一つになりましたし、勢いがつくような勝ち方。次が大事になってくるんで、またチーム一丸で戦いたい」と、しっかりと先を見据えた令和の侍。心配ご無用とばかりに、漢・柳田が結果で示した。

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