【侍ジャパン】ソフトバンク・柳田独自の「侍」精神とは? 打撃練習回避でも稲葉監督の信頼絶大

守備練習はきっちりこなしたソフトバンク・柳田

東京五輪で悲願の金メダル獲得を目指す野球日本代表「侍ジャパン」の強化合宿2日目が20日に仙台市内で行われた。打線の核を担う柳田悠岐外野手(32=ソフトバンク)は、右脇腹違和感の影響で初日に続いて打撃練習を回避。首脳陣の判断で慎重に状態を見極める中、稲葉篤紀監督(48)の柳田への信頼が揺らぐことは一切ない。代表首脳陣に心中を覚悟させる〝令和の侍〟の真価が問われる。

強化合宿は真昼の炎天下の中で行われた。シートノックでは柳田が中堅のポジションに入らず、鈴木誠(広島)と近藤(日本ハム)が代わりに入る形で進められた。ただ、柳田は打撃練習以外のメニューは滞りなく消化。前日同様に明るい表情で精力的な動きを見せた。

この日の練習後、取材に応じた稲葉監督は「見ての通り動けてはいる。本当に今は無理をしてもらうところではない。本人はやる気ではあったけど、こちら側があえて我慢をしてもらった」と説明。シートノック回避については「今、ギータがああいう形になってセンターをどうするかという。あまりそこは正直考えていなかったところなので。いろんなことが起こって、いろんな準備をみんなができている」と胸の内を率直に明かした。

危機管理上、有事への備えは当然。ただ、稲葉監督は「中堅・柳田」以外の選択肢を持ち合わせていないことも強調した。「ギータがDH(指名打者)というのは考えていない。投げる、走るは普通にできるんで。今はどっちかと言うと、打てるか打てないか。そこだと思う」。フルスイングが代名詞の鷹の主砲の回復力を信じて「中堅・柳田」で心中する覚悟を示した。

指揮官の絶大な信頼を受ける柳田もまた、覚悟を持って日の丸を背負っている。というのも、柳田が野球選手として大事にしてきたものこそが、まさに「侍精神」だからだ。超人的パワーとスピードを維持することは並大抵のことではない。肉体的負担は想像以上で、故障歴が多いのも事実だ。ただ公にはなっていないだけで、柳田だからこそ乗り越えられてきた試練も多い。

常勝軍団ソフトバンクの主力に定着して以来、柳田が〝手負い〟の状態の時に、自らに言い聞かせてきたことがある。

「僕は侍だと思っている。侍というのは痛いかゆいを言わない。球場に行くと決めた時点で『侍』。球場に入ったら、もう『痛いかゆい』は言わずにやる。できなかったら球場には来ないですから。球場にいるということは『やる』ということです」。

自己判断だけで決められる問題ではないことは重々承知している。常にトレーナー陣の意見とチーム方針を尊重してきた。その中で、侍精神を持ち続けてきたのが柳田だった。

天真らんまんのイメージが先行するが、同僚選手が尊敬するほど賢く、責任感が強い。当然「鷹の主砲」としての責任も忘れてはいないはずだ。柳田が強化合宿で再びバットを握るということは、後半戦のチームの戦いに影響を与えることなく、五輪金メダルに貢献できることを意味する。

周囲に不安を抱かせることを嫌う男でもある。この夏「真の侍」となって、不安を杞憂に終わらせるはずだ。

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