【柔道】その道の〝プロ〟も絶賛 金メダル・浜田尚里の寝技はココがすごい!

「寝技師」の面目躍如だ

柔道競技6日目(29日、日本武道館)、女子78キロ級決勝で初出場の浜田尚里(30=自衛隊)が世界ランキング1位のマロンガ(フランス)に崩れ上四方固めで一本勝ちし、金メダルを獲得した。この日の4試合すべてを寝技で一本勝ちする離れ業で、日本女子勢に今大会3個目の金をもたらした。浜田の十八番、寝技は世界中で高い評価を得ており、その道の「プロ」からも絶賛の声が上がっている。

「寝技師」の面目躍如だ。初戦の2回戦は横四方固めで押さえ込んで合わせ技、準々決勝は送り襟絞め、準決勝は腕ひしぎ十字固めと得意の寝技で一本勝ちを重ねてきた。

決勝の相手、マロンガは世界ランク1位の強敵だが、相手の内股をこらえて寝技に持ち込むと独壇場だ。マロンガの腕を柔道着でロックしたまま、相手の二重がらみを解いてがっちり押さえ込んだ。変幻自在のグラウンドテクニックを駆使して、この日の4試合をオール寝技で一本勝ち。大舞台でも自分の持ち味を発揮して、表彰台の頂点に立った。

同階級の日本勢では2004年アテネ五輪の阿武教子以来4大会ぶりの金メダル。浜田は「絶対に金メダルを取りたいという気持ちでやってきたので、優勝できてよかったです。(マロンガは)いつも負けていた相手だったので、同じやられ方をしないように対策をしてきた。得意の寝技で勝ててよかった」。優勝を決めて畳を下りた直後は笑顔を浮かべていたが、テレビ中継のインタビューでは感極まって何度も涙を拭った。

それにしてもすさまじいばかりの寝技の強さだ。柔道関係者は「寝技は相手とすごい接近しているので、本当に一瞬の勝負。予測も必要だし、一瞬のスキを突いて、そこから手順よく返したり、押さえ込んだり、関節技を決める必要がある。浜田は自分の得意技は何かを考えて、つくり上げてきた職人技ですよね」と絶賛する。

しかもその寝技にはオリジナリティーがあり、浜田にしかできない技も多いという。「なかなかまねしたくても、まねできないのが浜田の寝技。鋭い嗅覚(きゅうかく)と相手をおびき寄せる方法とかが本当に研ぎ澄まされている」(同関係者)

柔道出身で総合格闘技の「寝技の達人」として知られる〝バカサバイバー〟青木真也(38)は、浜田の技術をこう解説する。「柔道の寝技が強い、ホントに強いという印象です。亀(の体勢)を取ったりとか押さえ込みと関節技を併用してやっつけるのが上手。格闘技の寝技とはちょっと違いますね。それに彼女の強さは寝技と立ち技の中間のところ、いわゆる『ギワ』を取るのが本当にうまい。柔道というルールの中で、常人には理解できないほど細分化しすぎるところまでいっていると言っていいと思いますよ」

さらには「本当の寝技王である俺に言わせれば、その道はまだまだ長いぞってことです。柔道の寝技が完璧になったら、次はプロレスの寝技、格闘技の寝技、そしてよ…(略)とまだまだある。もし困ったら、いつでも教えますよ!」と余計なエールも送った。

阿部きょうだいや大野将平のような派手な勝ち方ではないが、浜田の柔道には格闘技の面白さが詰め込まれている。浜田は「寝技はすごく自分を助けてくれているものだと思っています」。ニッポン柔道のレベルの高さを証明する金メダルにもなった。

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