長崎平和宣言の骨子発表 被爆100年見据え 核禁条約参加を要望

2021年 長崎平和宣言(骨子)

 長崎市の田上富久市長は30日、8月9日の長崎原爆の日の平和祈念式典で読み上げる長崎平和宣言の骨子を発表した。今年発効した核兵器禁止条約について、日本政府と国会議員に対し、第1回締約国会議にオブザーバー参加し、署名・批准することを要望。4月に亡くなった被爆者、小崎登明さんの手記を引用し、核兵器廃絶に向けた決意を世界にアピールする。
 田上市長は会見で、今年は核兵器禁止条約の発効に加え、「被爆100年に向かう、次の25年のスタートとなる年」と説明。次の四半世紀では、体験を語れる被爆者がいない時代を迎えるとして「平和の大切さを伝えていく街であるために今すべきことを、核兵器のない世界の実現をイメージしながら取り組む必要がある」と語った。
 核兵器禁止条約については、世界の共通ルールとして育てていく必要があることも強調。世界の人々と「長崎を最後の被爆地に」との言葉の意味を共有しつつ、日本政府に対しては「北東アジア非核兵器地帯」構想の検討も求める。一方、核保有国間の核軍拡に向けた動きに対し危機感を表明した上で、核保有国と「核の傘」の下の国々のリーダーには核拡散防止条約(NPT)再検討会議で核軍縮の進展を要請する。
 スポーツや芸術などを通して、多くの人が平和について考える「平和の文化」を広めることにも触れた。また、「被爆体験者」の救済にも言及。ただ、広島原爆の「黒い雨」訴訟を巡る原告救済の政府方針など、直近の動きについては宣言に反映されていない。
 平和宣言は、被爆者や有識者ら15人の起草委員が内容を検討してきた。英語や中国語、ロシア語、フランス語など10カ国語に翻訳し、世界に発信する。


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