【侍ジャパン】「慢心だけは禁物」伊原春樹氏が田中将、千賀、鈴木誠の〝不安要素〟を緊急分析

ついに〝初戦〟を迎える田中将だが…

悲願の金メダルへ。東京五輪の野球日本代表・侍ジャパンは2日の準々決勝(横浜)で米国代表と対戦する。2連勝で無敗のままA組1位通過を決めたとあって、最短5試合での頂点到達へ期待も高まる中、本紙専属評論家の伊原春樹氏は「慢心だけは禁物」と警鐘を鳴らした。米国戦で先発確実な田中将大(32=楽天)と大会未登板の千賀滉大(28=ソフトバンク)、そして無安打が続く鈴木誠也(26=広島)の〝3侍〟について気になる不安要素を指摘した。

【新・鬼の手帳】言わずもがな米国代表は「難敵」だ。メジャーリーガーがメンバーに加わっていないとはいえ、MLB球団傘下に所属する3Aや2Aの有望株たちが投打にバランスよくそろっている。

満を持して先発マウンドに立つことになるであろう田中将も十分に警戒しなければならない。ヤンキース時代に対戦経験のある相手よりも、ほぼデータのないマイナーの打者のほうがやりにくいはずだ。しかも相手は「ビッグネームの田中将を打ち砕けば、自分のアピールにもつながる」と手ぐすねを引いているだろう。

そして厄介なのは、NPBから米国代表に選出されたDeNAのオースティンだ。今年の交流戦で対戦した際には本塁打を打たれているし、戦い慣れたDeNA本拠地の横浜スタジアムで打席に立てることもオースティンにとってはアドバンテージ。「去年までメジャーで投げていた田中将なら、マイナー中心の米国はきっちり抑えてくれるだろう」と言い切れないところは気にかかる。

それから千賀だ。本来持っている能力は誰もが認めるところだが、故障明けで調子が戻っていないリハビリの最中で国際舞台のメンバーに選出されたことには、私自身いまだに納得できていない。起用法は先発が崩れた時の第2先発か、あるいはロングリリーフとなるのか。もしくは第4ないし、第5の先発要員として大役が回ってくるかもしれない。ノックアウトステージが複雑なルールのため、今後の結果によって試合数や日程が変わる可能性もあり、チームとしても投手陣の起用法を固定しにくい背景があることは重々承知している。ただ、決して万全ではない今の千賀に対しては、どこで使うにしても怖さが残る。

最後にここまでの2試合で無安打に終わっている鈴木誠にも触れておきたい。復調に太鼓判を押す評論家もいるようだが、私から言わせればスイングも打球にもキレがなく、まだまだ本来の打撃にはほど遠い。今季はコロナ感染やワクチンの副反応なども重なり、コンディションを崩しながらの調整で、本人としても苦しみながらシーズンを戦っている。ここは思い切って4番の座を好調な村上(ヤクルト)あたりに任せるのも一つの手だろう。ちなみにベンチには勝負強い近藤(日本ハム)も控えている。

短期決戦は〝水物〟。正解を見つけにくいだけに評論もしにくいが、私の心配事が杞憂に終わり、このまま日本が金メダルに輝くことを祈っている。

(本紙専属評論家)

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