”食用コオロギ”で地域課題解決へ 商品化目指す 西海・バグズウェル

バグズウェルが飼育している食用コオロギ=西海市西彼町亀浦郷

 昆虫食のスタートアップ(新興企業)、BugsWell(バグズウェル、長崎県西海市)が、食用コオロギを使った商品の生産を本格化させる。地元の障害者施設などにマニュアルを提供して飼育を委託。コオロギを粉末状にして練り込んだ麺類や発酵食品、菓子の商品化も目指す。
 昆虫食を巡っては、国連食糧農業機関(FAO)が2013年、地球規模の食料危機の解決に昆虫を活用すべきとの報告書をまとめた。家畜と比べ飼育が容易。環境負荷も低く、タンパク質やビタミンなど栄養も豊富とされる。昨年、生活雑貨大手がコオロギを使った菓子を大学と共同開発するなど国内でも関心が高まっている。
 同社は、地域商社社長、浪方勇希さん(32)と料理店代表の津本真砂幸さん(48)=いずれも西海市=が今年1月設立。同市内の民家でコオロギの試験養殖を始め、現在約15万匹まで増やした。6月以降、金属加工メーカーや障害者施設など県内外の5事業所と契約して飼育の委託を進めている。
 同社によると、生産するのは食用のフタホシコオロギ。温度、給餌、抜け殻や糞の処理を適切に管理すれば、約35日で卵から成虫になる。委託先から引き取った後、生がきの殺菌処理にも使われる装置で除菌。粉末化して食品原料として出荷する予定。浪方さんは「トレーサビリティーがしっかりしたものを提供したい」とする。
 粉末を練り込んだ麺類や発酵食品、菓子の商品化も目指しており、クラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」でチョコレートの試験販売もしている。
 同市西彼町の障害者就労継続支援B型事業所「アベリア西海」は7月下旬に生産業務を受託。専用のプレハブ小屋を建て、1日から飼育を本格的に始めた。
 代表の本川パトリシアさん(54)によると、普段、利用者は包装や衣料品の検品などの軽作業をしているが、合間に昆虫の世話をすることで、癒やしを感じたり、集中力が高まったりするなどメンタル面のメリットを感じているという。
 浪方さんは、飼育場として空き家などの活用も視野に入れる。「昆虫食は食料危機の解決策となる貴重なタンパク源。事業を軌道に乗せ、福祉や空き家問題など地域の課題解決にもつなげることができれば」と話している。

アベリア西海の敷地内に造られたコオロギの飼育小屋と(右から)浪方さん、本川さん、津本さん=西海市西彼町中山郷

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