読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、42歳、会社員の女性。夫が勤務先の廃業により退職し、アルバイトとなり月収約10万円に。住宅ローンが600万円残っており、このまま老後も暮らしていけるのか不安だといいます。FPの飯田道子氏がお答えします。
42歳、会社員です。夫が、勤務先の廃業により52歳で退職しました。このまま夫婦2人で暮らしていけるか不安です。老後資金は足りるでしょうか?
現在の月の手取り収入は、私の約19万円と、夫のバイト代約10万ほど。貯金は約2,600万円、投資総額は約100万円。夫の退職金1,000万は受取済み。私は定年まで勤めて恐らく400万程度。
住宅ローンは残債約600万円、残り12年。これまで600万ほど繰上返済してきました。
年金は、私は20歳〜卒業まで国民年金、22歳から現在は厚生年金、未納期間なし。夫は学生時代と転職前などに5年ほど未納期間あり。厚生年金はトータル25年は加入期間あり。今は国民年金です。
【相談者プロフィール】
・女性、42歳、会社員
・夫:53歳、アルバイト。月収10〜12万円
・子ども:なし
・住居の形態:持ち家(マンション、北海道)
・毎月の世帯の手取り金額:29万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:80万円
・毎月の世帯の支出の目安:約24万円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:8万4,000円
・食費:3万円
・水道光熱費:1万7,000円
・保険料:1万5,000円
・通信費:2万円
・車両費:5,000円
・お小遣い:3万円
・その他:3万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:4万2,000円
・ボーナスからの年間貯蓄額:60万円
・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,600万円
・現在の投資総額:100万円
・現在の負債総額(住宅ローン):600万円(購入額2,080万円、借入額1,780万円、
金利1.2%、返済期間35年→残り12年)
飯田:今回は、夫の勤務先が廃業してしまったことにより、勤務形態が変わってしまい、夫婦2人でこのまま暮らしていけるか不安を抱いている相談者様です。夫婦2人で暮らしていくには、どのようにすると良いのでしょう? また、老後資金は足りるのか、どのように準備すると良いのかについてお話してみたいと思います。
無駄遣いもなく堅実な家計
ご主人の勤務先が無くなってしまったことは、ご主人のみならず、相談者様もショックだったと思いますし、戸惑われていたと思います。
そんななか、現在の収入は家計全体で29万円、支出は24万円です。預貯金もコンスタントに続けていらっしゃいますね。支出の内訳を拝見すると、特にムダ遣いになるような部分もなく、堅実な家計管理をされていますよ。とても立派です。
使途不明金がないように、このまま家計管理を継続していきましょう。
ローンの一括返済は検討の余地あり
相談者様にとっての現在の悩みのタネである、老後資金は足りるのでしょうか?
まず、負債部分から見て行きましょう。
現状では、住宅ローンの残債が600万円で、残りの返済期間は12年です。ご夫婦の年齢から考えると、奥様の現役中の54歳のときに、ご主人が65歳になるときには完済できます。このまま返済し続けても良いのですが、早いうちに一括返済をしても良いと思います。検討してください。
預貯金は2,600万円、投資は100万円です。実は、この預貯金額が一括返済をお勧めする理由でもあるのです。
現在の貯蓄は毎月4万2,000円です。ご主人が65歳になるまでこのまま12年間、仕事を続けていれば、4万2,000円×12カ月×12年で604万8,000円貯まります。ほぼ、負債と同じ金額になりますよね。
早めに一括返済した場合、ご主人が65歳のときの預貯金額は、2,600万円-600万円+600万円。つまり、2,600万円の預貯金が手元に残る計算です。
また、早めに住宅ローンを一括返済することで利息分が浮き、預貯金に回すことのできる金額も増えますので、ご主人が65歳になったときには、2,600万円以上の預貯金+投資額100万円が残っている計算になります。
さらに、将来的には相談者様の退職金400万円も加わります。相談者様が退職する時点では、少なくとも3,100万円以上が手元にあることになります。
このままの家計ならば将来困ることはない
生命保険文化センターが行った調査によると、老後の最低日常生活費は月額で平均22.1万円です。
また、厚生労働省が平成30年度に行った調査では、国民年金を含んだ厚生年金の平均支給額は月額で男性は約16万6,000円、女性は約10万3,000円です。全体の平均支給額は約14万7,000円でした。
この金額はあくまでも参考にしかなりませんが、セカンドライフをスタートする際、年金を受給しながら手元に3,000万円の預貯金があれば、夫婦2人の生活で困ることはないでしょう。
もちろん、あらかじめ「ねんきん定期便」等で受給額を確認しておき、毎月の不足分がいくらになるのかを試算しておくことをお勧めします。
ローンを完済すればセカンドライフの計画が立てやすくなる
すでに繰り上げ返済を経験されているとのことですので、一括返済に抵抗はないかもしれません。ただ、まとまったお金がいきなり減ってしまうのは、不安に感じるかもしれませんね。
相談者様の場合、12年間コツコツ返済してもOKですし、一括返済でもOKなのです。ただ、ご夫婦2人が元気で働けるうちに完済しておくことで預貯金額を上乗せすることができますし、住宅ローンのトータル返済額も抑える効果もあります。
もちろん、ライフプラン的には現状維持でも問題はないのですが、可能であれば、早めに完済すると、セカンドライフに向けた次のステップを踏み出しやすくなりますので検討してみてください。
どのようなセカンドライフを送るのかをイメージしておく
年齢差があるご夫婦のため、奥様が60歳で定年退職を迎えると、その時、ご主人は71歳です。ご主人自身、いつまでもお仕事を続けていきたいと言う思いもあるかもしれませんが、年齢差がある夫婦だからこそ、若いうちに2人で楽しみたいことを計画しても良いですね。
そのためにはどのようなセカンドライフを送るのかを具体的にイメージし、どれくらいの費用がかかるのかを調べ、予算立てをしてください。
人生は90年とも言われています。セカンドライフは、夫婦で楽しむ時間と捉えて、素晴らしい時間を過ごして欲しいと思います。