【東京五輪】無観客のスポーツクライミング「会場ほぼ満員で大盛り上がり」のカラクリ

スポーツクライミング男子複合決勝は多くの〝観客〟で盛り上がった…

この光景は…。東京五輪・スポーツクライミング男子複合決勝(5日、青海アーバンスポーツパーク)で、日本期待の楢崎智亜(25=TEAM au)は全体4位でメダルを逃した。その一方で、会場内の客席の一角は関係者やボランティアで埋まり、大盛り上がり。まさかの〝ほぼ有観客〟と化した。無観客開催の東京五輪で、なぜこんなことになったのか。その現場をリポートする。

史上初の無観客開催と言っても、すべての客席が空席というわけではない。実際、各会場で選手やコーチらが客席に陣取って観戦するのは見慣れた光景だ。しかし、この日は「規模」が違った。競技が佳境を迎えると、各国選手団の関係者やボランティアがステージ付近に引き寄せられ、前方の席は〝ほぼ満席〟の状態となった。

スポーツクライミングは今大会から採用された新種目で、DJがノリのいい音楽とともに会場を盛り上げるのが特徴だ。見ている側のテンションも次第に上がり、日が落ちてステージ上がライティングされると会場内はさらにヒートアップ。客席からは大歓声が上がり、まるで音楽ライブの会場にでもいるような錯覚に陥った。

「これならお客さん入れた方が良かったですよ」。遠巻きに見ていた運営スタッフの男性が、ポツリと漏らした。いったい、なぜこんな現象が起きているのか。男性スタッフは「観客席に誰もいないと選手も寂しいから、ボランティアの方はテレビカメラに映らない範囲で観客席に座るよう言われているんですよ」と驚きの証言をした。

誰が指示を出しているかについては具体的に明かさなかったものの、確かにボランティアも客席で観戦している。同スタッフは「(競技が)盛り上がると、どんどん前に来る。本当はダメなんですけど…」とバツが悪そうに話した。

実は、ゴルフ男子最終ラウンド(1日、霞ヶ関CC)でも同様の現象があった。多くのボランティアが実質的に〝ギャラリー〟となったシーンがテレビに映し出され、一部の視聴者から批判が出ていた。大会組織委員会による5日の会見では報道陣から「何か指示を出しているのか?」との質問が飛んだが、組織委側は「(事情を)承知していない」。

しかし、前出スタッフの証言からすると、ボランティアを〝サクラ〟として利用し、少しでも見栄えを良くしたいとの思惑も見え隠れする。今大会を無観客開催としたことで、多くのチケットホルダーは泣く泣く会場での観戦をあきらめている。それなのに、テレビ画面の向こう側の会場内は大勢の〝観客〟が大盛り上がり…。ここに矛盾を感じる人も少なくないはずだ。

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